(画像左から)山脇千栄、住吉佑太 撮影:イシイノブミ (画像左から)山脇千栄、住吉佑太 撮影:イシイノブミ

太鼓芸能集団「鼓童」の新作公演『巡-MEGURU-』の全国ツアーが11月に開幕する。本作は、1981年のベルリン芸術祭でのデビュー以来、実にさまざまな挑戦を行ってきた鼓童にとっても、これまでにない取り組みになるという。今作で初めて演出を手掛ける住吉佑太と、奏者として出演する山脇千栄に話を聞いた。

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外部の演出に依頼するのではなく、鼓童内部のメンバーでの演出による、楽曲も全て新曲、衣装も新調する公演は、鼓童初の試み。それはつまり新世代の革新かと尋ねると、そうではないと住吉は言う。「鼓童は30周年を迎えたときに“自分たちだけではどうしても打ち破ることのできない固定概念を打破したい”と考え、芸術監督に坂東玉三郎さんをお迎えし、本当にさまざまな壁を取り払ってもらいました。それを経て今、自分たちで新たな1歩を踏み出す時期がきた。そこで、これまで大切にしてきた作品をやりながらも、常に新しいものを作り続けていかなければいけないと考えました。その第1弾がこの作品です。ただ、新しいものをつくるにしても、僕は太鼓や鼓童のカッコよさを変えたいわけではない。本来のカッコよさに辿り着くまでの入り口を増やす作品だと思っています。この作品は、僕と同世代の方々にも楽しんでもらえることをテーマにしています」。

具体的には「クラブミュージックやダンスミュージックなど、僕ら世代にとっての身近な音楽からインスパイアされた楽曲がいくつかあります」と住吉。奏者の山脇も「使うバチやそのタッチ、音量など、いろんな部分が繊細につくられているなと思います。太鼓にはいろんな音があると学ぶ日々です」と語り、これまでにない鼓童の音が楽しめそうだ。その音のキーになるのは、山脇が演奏するマリンバ。住吉は「僕がやりたい音楽の大きなテーマに“反復と揺らぎ”というものがあって。公演タイトルでもある『巡』という楽曲も、何度も何度も反復していくようなものをつくりました。ただ、繰り返す旋律って、太鼓でやるとメロディがないので繰り返し感が出ないんですよ。でも笛だと息継ぎがあるので人間臭さが出ちゃったりして。それでマリンバに至りました。淡々とした繰り返しを表現できるし、民族楽器にも西洋楽器にも自然の音や電子音楽にも聞こえる無色透明さがあるので」。山脇も「マリンバに合うのはどんな音なのか、先輩たちの音を聴いて、自分の音を聴いて、作品作りに向かっています」と新鮮な組み合わせに取り組む日々だ。

「インストバンドのライブに行くような感覚で来てほしい」(住吉)という、鼓童ファンはもちろん音楽好きにもオススメの本作は、11月に始まる全国ツアー後、12月19日(水)から23日(日・祝)まで東京・文京シビックホール大ホールにて上演。

取材・文:中川美穂