ソニー、ニコンに続き、キヤノンがフルサイズミラーレスに参入

9月5日にキヤノンがフルサイズミラーレス一眼カメラ市場に参入すると発表した。数年前から展開しているソニー、2週間前に参入を表明したばかりのニコンに続いて3社目の参入。ここにきて市場が一気に形成されつつある。

各社がミラーレスに注力するのには、明確な根拠がある。キヤノンマーケティングジャパンの坂田正弘社長によると、レンズ交換式カメラの市場規模は直近5年で下落しているが、ミラーレスに限定すれば2016年を底に上昇に転じているという。販売台数の構成比をみても、ミラーレスの伸長は明らかだ。16年が37%、17年が45%だったが、18年は56%。一眼レフを上回った。

キヤノンにとっては、ミドルクラスで3月に発売した「EOS Kiss M」の好調も確かな手応えにつながっている。家電量販店やECから実売データを集計している「BCNランキング」によると、ミラーレスのメーカー別販売ランキングでキヤノンは3月から6カ月連続で首位を獲得。機種別販売台数でみても、EOS Kiss Mの貢献度は大きく、狙い通りの成果が出ているといえる。

一般的には、「手軽な撮影はミラーレス、本格的な撮影は一眼レフ」というイメージがあるかもしれないが、実際のユーザーからするとそうした意識も変わりつつある。CANON iMAGE GATEWAYが今年3月に実施したユーザーアンケートによると、「次に購入するカメラ」に関する設問で「フルサイズ」と回答したのは、すでにフルサイズを利用しているユーザーで82%、いまはAPS-Cを利用しているユーザーで70%と総じて高かった。ミラーレス+フルサイズはまさに時代の求めるニーズになっている。

キヤノンは、「EOS Kiss M」の発表時に「ミラーレスでシェアNo.1を目指す」と宣言したが、今回投入する「EOS R」にもその本気度は表れている。新イメージングシステムを採用した点もさることながら、税別で24万円を切るフルサイズ機として手ごろな価格には驚いた。

参考にフルサイズの競合最新機種と比較すると、ソニーの「α7R III」は37万円前後、ニコンの「Z7」は44万円前後、「Z6」は27万円前後。ソニーは、数年前のモデルであれば10万円台のものもあるため、EOS Rが最安値とは一概にはいえないが、それでも魅力的な価格であることには違いないだろう。発表会で配布された資料は価格のみ別紙であったことから、ギリギリまで競合をにらみながら価格調整を行っていたのではないかと予測できる。

一方で気になるのは、一眼レフとの自社競合だ。キヤノンの真栄田雅也社長は「フルラインアップ戦略を今後も維持する。お客さまの選択肢を狭めることはしない」と一眼レフのポジションは変わらないという考えを示したが、次世代に向けて新たな方向にかじを切る覚悟は、キヤノンだけでなくカメラメーカー各社、すでに固まっているのではないかという気がする。停滞しているカメラ市場を立て直すには、ミラーレスをメインストリームに据えて次世代の可能性を提示する以外に道はない。(BCN・大蔵 大輔)