郵便局のキャッシュレス化は地方や高齢者への波及効果も期待されるが……

官民で一斉に脱現金主義の動きが高まっているが、ついにその改革が全国に約2万局、誰もが利用するともいえる郵便局に取り入れられることになりそうだ。日本経済新聞は9月9日に日本郵便が2020年からキャッシュレス決済を導入すると報じた。これまで郵便局の窓口では現金必須だったが、外国人観光客からの要請や20年に開催される東京五輪を目指し、急ピッチで環境を整えるという。

そもそも日本でキャッシュレス決済の普及が掲げられたのは、経済産業省が発表した「『日本再興戦略』改定 2014」に遡る。狙いとしてあげられていたのは、少子高齢化・人口減に伴う生産性の低下をキャッシュレスによる店舗の無人化や省力化、現金資産の見える化、支払いデータ活用による消費喚起など。これらに、「日本再興戦略 2016」で20年開催のオリンピックを視野に入れた外国人観光客への対応という色合いが加わる。キャッシュレス決済比率4割という目標の達成時期が27年から25年に前倒しされていることからも、喫緊の課題として優先度が高くなっていることがうかがえる。

地域に根ざした郵便局のキャッシュレス化は歓迎すべきものなのだが、「2020年の東京五輪を見据えて」という目標は自らの首を絞めることになりかねないという懸念もある。まず、スケジュールに無理がある。今回の郵便局の例でいえば、20年2月に全国50局で300台の決済端末を配備し、試験運用を開始。5月までに1万局に拡大し、7月の五輪開催までに全国の半分以上の局で正式に導入するとのことだが、これはあくまですべてが順調に行った場合のロードマップだ。

地方や高齢者まで波及させるなら、窓口に決済端末があるだけでは不十分。スマートフォン(スマホ)、あるいはスマホ以外のキャッシュレス決済手段の啓蒙も含めて担う必要があるだろう。利用者を置き去りにした「キャッシュレス化ありき」の施策は、キャッシュレス決済比率の向上に貢献しないばかりではなく、思わぬ弊害を生みかねない。

弊害とは具体的に何かという事例が、9月6日に発生した北海道胆振地方中東部を震源とする地震で示された。地震直後、停電による店舗の決済端末やATMの停止によって、キャッシュレス決済が一部で麻痺。日常生活の決済をすべてキャッシュレスに置き換えていた現金を持たない人は一時的に身動きが取れない状態に陥ったという。

同様の事態は、非常時に限らない。スマホの紛失・故障によっても簡単に決済手段は失われる。「東京五輪に間に合わせる」ではなく「いかに国民のリテラシーを上げ、実態に即した手段に整えていくか」という意識をもたなければ、東京五輪後の長期間にわたって、日本は不完全なキャッシュレス決済に苦しめられることになるかもしれない。

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