ASUSの「Zenfone 2」

今年1月、米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「2015 International CES」で展示されていたさまざまな製品・テクノロジーがなかから、スマートフォン関連に絞ってまとめた。

現在、世界のスマートフォンの主戦場は、中国と欧州市場。アメリカを中心とする北米市場はメーカーシェアが固定化し、そこに割って入るには大きなチャレンジが必要になる。スマートフォン需要が一段落している現在、新たに北米市場を狙うメーカーは少なく、今年のCESでは大手メーカーから新作は登場しなかった。おそらく、今年3月にスペイン・バルセロナで開催される「Mobile World Congress(MWC)」が新作発表の場になるだろう。今年のCESで、もはやその存在が「主役」から、いて当然の「レギュラー」になったスマートフォンに代わって話題になったのが、スマートフォンと連携する家電製品や新しいIoT機器だった。

●SIMロックフリー端末で北米でも積極的に攻めるASUS

スマートフォンの発表が少ないなかで印象に残ったのが、日本同様、北米市場でも積極的に展開するASUSだ。北米は日本と同じように通信キャリアが強く、多くの端末はキャリア回線に紐づいている。しかし近年は、プリペイドプランなどで使えるSIMロックフリーのスマートフォンが非常に増えている状況だ。

ASUSが発表したスマートフォンは、5.5インチのフルHDディスプレイを採用し、OSにAndroid 5.0を搭載した「Zenfone 2」だ。SoC(System-on-a-chip)には、Intel Atom Z3580 64bit クアッドコアを採用する。

注目は、世界初のRAM4GBモデルを選択できる点だ。さまざまなアプリをたっぷり使いたいという人には、非常に魅力的な仕様だ。RAMは、2GBモデルもある。

サイズは 幅77.2×高さ152.5×厚さ10.9mmで、重さは約170g。これで199ドル(約2万4000円)と、非常にお買い得な戦略的な価格だ。北米市場で3月に発売し、日本でも近いタイミングでの発売が期待できそうだ。

ASUSのスマートフォンでもう一つ注目が集まったのが、「Zenfone Zoom」の技術発表だった。最大の特徴は、製品名の通り光学3倍ズームを搭載すること。1300万画素センサを搭載し、レーザーAF(オートフォーカス)、光学手ブレ補正にも対応するなど、徹底してカメラ機能にこだわった仕様なのだ。

残念ならショーケース展示で触ることはできず、主な仕様は未公開だった。今年第2四半期には発売されるようだ。こちらも日本での発売を期待したい。

●各社が展示した日本未発表のスマートフォンたち

スマートフォンのグローバル市場でトップシェアを誇る韓国のサムスン。日本でも「GALAXY」シリーズは高い人気を誇る。サムスンは新作の発表こそなかったものの、日本未発売の5.7インチディスプレイを搭載した「GALAXY Note 4」を展示していた。

「Note」シリーズは、これまで「1」から「3」が国内で発売されているが、残念ながら「4」は発売されておらず、現在は代わりに曲面液晶を採用した「GALAXY Note Edge」を販売している。画面の大きさやペンタッチによる操作性など、ファンが多いモデルだけに、「GALAXY Note 4」の登場に期待したい。

韓国を代表するもう一つのメーカー、LGは、新作スマートフォン「LG G Flex 2」を発表した。5.5インチの曲面有機ELディスプレイを採用したモデルで、ボディが前面に向かって大きく弧を描いているのが特徴だ。

プロセッサに最新のSnapdragon 810を搭載するなど、ハイエンドモデルとして十分な仕様。背面パネルには、傷ができても自動で修復するコーティングを施した。前モデルから画面サイズがわずかに小さくなったこともあって、手になじむ印象だ。韓国や米国での発売予定はあるが、日本市場は未定のようだ。

数少ない新作発表を行ったメーカーの一つが、中国のZTE。6インチディスプレイを採用した「ZTE Grand X Max+」と、コンパクトサイズの「スマートプロジェクター Spro 2」を発表した。

「ZTE Grand X Max+」は解像度がHDで、プロセッサには「Snapdragon 400」を搭載するミドルクラスのスマートフォン。サイズは幅83.1×高さ162.1×厚さ7.9mmで、重さは約171.8g。プリペイド契約ができるMVNO事業者、米クリケット・ワイヤレス向けに発売する予定で、残念ながらSIMロックになるようだ。

一方、OSにAndoridを搭載したモバイルプロジェクター「スマートプロジェクター Spro 2」はLTEに対応。モバイルルータとして利用でき、上部の5インチディスプレイで単体でも操作できる。また、スマートフォンとワイヤレスで接続して操作することもできる。投影できる解像度は1280×720ドットで輝度は200lm(ルーメン)と、プロジェクターとしての機能も十分だ。発売日や価格は未定。

ファーウェイは、昨年末に中国向けに発売した「Honor 6 Plus」などを展示。「Honor 6 Plus」は、800万画素のカメラを二つ搭載するツインカメラを採用。撮影した写真の好きな場所をタップすることで、あとからピントの位置を調整することができる。

ディスプレイは5.5インチのフルHDで、プロセッサにはオクタコアで動作するKirin 925を採用するなど、非常に高性能の一台だ。サイズは幅75.68×高さ150.46×厚さ7.5mmで重さは165g。

一方、日本メーカーは、グローバル展開しているソニーが新作を発表しなかったこともあって、スマートフォンの話題は非常に少なかった。しかし、パナソニックは、昨年秋に欧州市場で発表したコミュニケーションカメラ「DMC-CM1」を展示。北米市場での発売も発表した。日本では3月12日に発売する。

また、新作ではないが、ほとんどフレームがないように見えることで注目を集めたシャープの「AQUOS Crystl」が、「CES INNOVATIN AWARDS」を受賞。北米市場での存在感を示した。

●スマートフォン/インターネットと連携できる家電たち

スマートフォンが普及して、いつでもどこでも通信できる環境を多くのユーザーが持ち歩くようになったことで、インターネットに接続して、スマートフォンで操作する家電製品が数多く登場した。

「IoT(Internet of Things)」というキーワードで多くのメーカーが手がけているのが、スマートフォンと連携するドアロックだ。アメリカを代表するドアノブメーカー、クイックセットの「kevo」はその代表。スマートフォンアプリで登録することで、いちいち鍵を取り出すことなく、タッチだけでロック/解除ができる。アプリからは、それらの履歴や、誰がいつ出入りしたかといったログを取得できる仕組みだ。

ネット接続に対応した家電製品を数多く手がけるベルキンは、スマートフォンから制御できるコーヒーメーカーを出品した。豆を挽くところから全自動で制御し、寝室にいながらコーヒーがいれることができる。

日本のベンチャー企業であるセレボは、タブレット端末と連動するスノーボード用ビンディング「XON SNOW-1」を出品。センサによって加重をリアルタイムで認識し、タブレット端末の画面上に表示する。(デジタル家電ライター/コヤマタカヒロ)