映画『 ベルセルク 黄金時代篇』を手がける窪岡俊之監督

三浦建太郎原作の人気コミックを映画化するプロジェクトの第1弾『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』がついに公開された。世界中に熱狂的なファンをもつ原作を、これまでにないほど精緻な映像表現で映画化しようという壮大な計画はどのようにして実現したのか? 本作を手がけた窪岡俊之監督に話を聞いた。

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『ベルセルク…』は、己の力だけを信じて戦乱の世を渡ってきた孤高の剣士ガッツと、最強の傭兵集団“鷹の団”を率いて自らの大いなる野望を果たそうとするグリフィスを主軸に、過酷な世界で生きる男たちの友情と宿命を描いた大河ドラマ。

ダイナミックな画と、複雑に入り組んだ深い人間ドラマ、そして先の読めないストーリー。三浦氏の原作コミックは現在も連載中の大河ドラマだが、窪岡監督は「馬の大群や兵士も含めて“物量”が本当に多いんです。アニメは何でも描けるんですけど“説得力”をもって描くのは難しい。でも極力“スゴみ”のある映像を作りたかったですし、説得力をある“高み”までもっていきたかったですね」。

本作は、作画監督を務めた恩田尚之氏らを筆頭に日本を代表するアニメーターたちが集結すると同時に、デジタル技術を大胆に導入し、これまでのアニメ映画にはない“写実的な演出”が随所に見られる作品だ。「どうやって作画とCGをブレンドするのかは試行錯誤がありました。ただ、観客がまず目がいく部分はキャラクターの“顔”なので、顔が手描きであれば、ほかは気にならないんですね」。本作では一見、すべて手描きで作成されているように見えるアニメーションでも、首から下はすべてCGというショットが多く存在するという。「必ず『え?これってCGなんですか?』と言われるんです。ただ手法は何でもよくて“どうやったら『ベルセルク』を映像化できるか?”だけでした」。

CGアニメーション全盛の現在、作画用紙に1枚1枚、画を書いてキャラクターに命を吹き込むアニメーターの数は減ってきている。「三浦先生が超人的な画力の持ち主ですし、恩田さんのキャラクターをまともに描ける人は本当に少ないんですよ。だから他の作品以上にスタッフ探しには苦労しましたね。僕は映画の基本は“サイレント”だと思っているので、セリフに頼らなくても内容がわかる画であってほしいですし、モノローグも可能な限り減らして“画で伝える”ことを目指したかったんです」。その一方でCG時代ならではの“新たな才能”もスタジオに出現しているという。「3DCGでキャラクターアニメをできる人はそんなにいない、という認識だったので最初は不安だったんですが、作業を進めていくと『これスゴいな』というカットがどんどん出てきて。そういう新しい才能のある人が出てきたことは“うれしい誤算”でしたね」。

これまでも壮大なアニメ大作は多く存在した。しかし、手描きアニメの才能と、新しく出てきたCGキャラクターアニメの才能がここまでのスケールで融合して制作された作品は本作が初となるのではないだろうか。

『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』
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