最低限のお金で手作りのヒーローを

では、横浜のごみ問題に立ち向かうヒーローは、どのようにして生まれたのか。
始まりは2012(平成24)年の5月ごろ。当時、南事務所で働いていた青木さんの耳に「そう言えば、横浜にヒーローっていないね」という当時の副区長の言葉が届いたのがきっかけだった。

仮面ライダーやウルトラマンを見て育ったという青木さんは、オリジナルヒーローを作って啓発活動に役立てたいというプランを前々から暖めていたそうで、すぐに副区長の言葉に反応。

 

元祖シボレンジャーのレッドと相棒のイエロー(画像提供:資源循環局南事務所)

「すでにデザインも考えてありました」と準備万端だった青木さんが提出した企画はとんとん拍子で進み、あっという間に予算がつくことになった。

「タイミングも良かったんですよ」と話す青木さんだが、その心は7月末に区民祭りという発表の場を控えていたということ。そこに向けて、一気にレッドを仕上げていったそうだ。

「3週間くらいで大急ぎで作りました」と当時を振り返る青木さんは、コンセプトに「手作り」を掲げた。

「お金をかければ完成度は上がるけど、それでは面白くないと思った。愛情を込めて、いかにも手作りといったチープさを売りにして、最低限のお金で啓発に使いたかった」と青木さんは言う。

実際、ヒーローたちのベースとなっているのは、パーティーグッズとして売られているマスクやスーツ。元になっているのはすべて同じマスクだそうだ。

買ってくるマスクは赤く派手な飾りのないものだ。そこに、必要に応じてラッカー塗料で塗装したり、ソフトボードと呼ばれるスポンジのような素材でツノなどの装飾を作り、クールガンというハンダごてのような道具で接着していくことで、個性を出している。
プラモデルが好きだったという少年時代の経験が生かされ、正に手作りのヒーローが出来上がっていったわけだ。

胸のプロテクターももちろん手作りで、ヒーローの足元を支えるのは、なんと地下足袋。
シボレンジャーは市販されている素材だけを使い、一体当たり2万円程度で完成させているそうだから、「手作り」のコンセプト通り。

区民祭りでお披露目されたレッドは好評を博し、区内の幼稚園やイベントに出演を繰り返すようになっていった。これがシボレンジャーの始まりというわけだ。

当時の南区長から押された太鼓判で、青木さんや仲間たちにはさらに火が着き、新キャラクターのイエローが作られた。レッド、イエローの活躍に賛同したほかの区からは「うちも作りたい」という声が上がり、冒頭でご紹介した通り、今では6つの区にまたがる大戦隊となったのだそうだ。