壇蜜

 艶めく風貌と、エロチックな中に知性とユーモアを織り交ぜた話術で人々を魅了し、たおやかかつりんとした輝きを放つ壇蜜。とりわけ、グラビアや映画で見せる過激でセクシーな姿は男性陣のハートをとらえ、“セックスシンボル”として揺るぎない地位を確立した。ところが、最近はセクシー路線から舵を切り、少し落ち着いたようにも見える…。

 デビューして数年後の2012年にブレークして以降、「脱ぐことが天命」と話す通り、男性が求める以上のセクシーな言動で世間をにぎわせてきた壇蜜。だが、近年は女優業が順調で、役柄も尼僧、歌人、キャリアウーマン、医師と多岐にわたり、その演技力も好評だ。

 日本舞踊の師範、調理師、エンバーマーといった意外な資格を保有しているバックグラウンドも興味深く、もともと豊かな才能を持つ故に、芸能界で幅広く活躍していることも当然のように感じる。だからこそ、誰にもまねできないエロチックな世界観を繰り広げる壇蜜をまだまだ拝みたいものだ。

 だが、その願いむなしく、壇蜜は「年齢的に自分がやりたいからやれる状況ではないので、できることとお断りすることをシビアに決めなければいけないと思います。事務所に所属している以上、私という運営ができなくなるのであれば、私が身を引かないと」と胸中を吐露する。

 やるせなさがにじむ言葉に、「現状に満足しているのか」と聞いてみると、「どうだろう?」と首をかしげつつ、「性格的に自分が充実したらいかんという気持ちがあります。自分が充実すると、みんなは幸せなのかな? 私はここにいていいのかな? と変なふうに考えて、下手したらいなくなっちゃうかも…」と危うい願望も口にした。

 しかし、そういう心情があるからこそ、「皆さんには充実してもらっている感じはするし、『いいものができた』と喜んでいただければ、良かったと思います」と納得している様子ものぞかせた。

 そうやって歩み続ける壇蜜が出演するのが、“食”と“性”をテーマに、年齢、職業、価値観もさまざまな8人の女性たちが、孤独を抱えながらも幸せを模索する日々を描いた映画『食べる女』。壇蜜は「ハッピーエンドとは言えないかもしれないけど、それぞれの女性たちのちょっとだけよくなった先が見られてワクワクします」と声を弾ませる。

 演じる米坂ツヤコは、5歳と11歳の2児の母であり、自身から心が離れた夫と別居中のパーツモデル。現在37歳ということもあり、「これぐらいの年の子がいるとイメージされることは自然だし、ヒールを履いたり、衣装がお母さんっぽくなく、仕事も子育ても諦めていないところに、私が演じる意味があったのかな」と推測する。

 「ツヤコがよりどころにしているのは子どもだけれど、私もペットがいないと駄目になっちゃいます。守らなければいけない存在なのに自分が守られているところは同じかな」と共通性も明かしてはにかんだ。

 現在、ネコとナマズを飼っているそうで、「こんなに管理されている仕事なのに、現実から離されることも多く、今、現実に触れているものは何かあったかな?と悩んでしまうとき、手に追えない生き物がいると、『これが現実か…』と引き戻されて安心する」のだとか。

 少し浮世離れしたかわいらしい母親像は壇蜜に見事にはまっているが、劇中、沢尻エリカ、広瀬アリス、シャーロット・ケイト・フォックスが大胆なぬれ場に挑んでいることから、ファンの期待もいかばかりか。

 そんな心配をよそに、壇蜜は「想像していただければ。子どもを連れているということは、そういう行為をした結果だと思うと、妙に生々しいですよね」とにっこり。しとやかながら扇情的な微笑は以前となんら変わっていない。

(取材・文・写真/錦怜那)

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