『ママと僕たち よちよちフェスティバル ~もっかい!いち!に!~』 『ママと僕たち よちよちフェスティバル ~もっかい!いち!に!~』

舞台『ママと僕たち よちよちフェスティバル ~もっかい!いち!に!~』が2月7日、東京・AiiA Theater Tokyoで開幕した。2013年上演の「ママと僕たち」と、その翌年上演された「ママと僕たち~おべんきょイヤイヤBABYS~」から成る“ママ僕シリーズ”。大好評につき再演となった今回は、〈よちよちフェスティバル〉と題して、この2作を連続上演する。舞台上を駆け回るフレッシュな若手キャストを支えるのは、拙者ムニエルや猫のホテル、ナイロン100℃など小劇場界の実力派役者陣。公演前半に上演されるシリーズ第1作「ママと僕たち」を観た。

舞台『ママと僕たち』チケット情報

夜中まで働くママたちのために開いている〈たけのこ保育園〉。0歳児の〈こぐま組〉にキミヒコ(原嶋元久)がやってくると、そこにはリュウノスケ(鯨井康介)やゲンキ(味方良介)、リク(矢田悠祐)ら、ワケありのママを持つ赤ちゃんたちがいた。全員まだ言葉は話せないものの、赤ちゃん同士の“会話”では家族の悩みや恋バナなどを打ち明けあい、すぐに意気投合。そんななか、リクのママが、ある事件に巻き込まれそうになる。何もできない自分たちに焦る彼らの前に、なんと伝説の妖精が現れて…。

赤ちゃんが主人公!?と面食らう設定も、戸惑うのは始めだけ。ママを慕い、時に恋のために団結して奔走する赤ちゃんたちの“会話”は、ティーンの男子そのものだ。“実は大人たちのやりとりも理解している”という点も、赤ちゃんがふいに笑ったり泣いたりして大人が「こちらの言ったことを理解しているようだ」と感じる、あの現実にもよくある場面を挿入することで、無理なくリアリティをもたせている。それがあってこそ、妖精の力で彼らが大人になった後でも、普通より少しだけピュアな青年の心情を追う形で自然にストーリーに入り込めた。

鯨井、味方、原嶋は再演だけあって会話のテンポもよく、大人になってからはポップな歌とダンスで魅せる。ゲンキの兄である子役志望のユウキ役・安川純平の腹黒い子供っぷり、今回リク役を演じる矢田の寂しげなたたずまいが印象的。保育士役の平野良、ママ役の佐藤真弓、新谷真弓、大村彩子、また謎のおじさん役の廣川三憲、怪しいマネージャー役の千代田信一の緩急自在さが頼もしい。さらにセルフパロディともいえる“歌のしんじろうお兄さん”役・今井ゆうぞうの、予想以上の弾けっぷりが見事。一挙手一投足に目がいってしまった。

考えてみれば、男性にとってママは何歳になっても特別な存在。とはいえ単なるマザコンではなく、親子愛の絶妙なラインを守ってしっかりとキャストの可愛さを表しているのは、脚本・演出を担当した手練・村上大樹の成果だろう。パワーアップした今回の再演、後半上演の「ママと僕たち~おべんきょイヤイヤBABYS~」にも期待したい。

舞台は3月1日(日)まで。

取材・文 佐藤さくら