左から、中屋敷法仁、岡村俊一 左から、中屋敷法仁、岡村俊一

紀伊國屋ホールでのつかこうへい作品の公演が今年も始まる。今回は「つかこうへい Triple Impact」と銘打ち、3作品が登場。『初級革命講座 飛龍伝』と『いつも心に太陽を』を岡村俊一が演出し、『ロマンス2015』を中屋敷法仁が任された。いずれも上演回数が少なく、それゆえに手強く、つかの原点のような伝説的な作品ばかり。柳下大や鈴木勝大といった若手俳優たちとともにその困難に挑む、ふたりの演出家に本番を控えた思いを聞いた。

つかこうへい Triple Impact チケット情報

今年の紀伊國屋ホールに、中屋敷の演出を迎えることを企画したのは、長くつか作品に関わってきた岡村だ。「2013年に中屋敷くんが演出した『飛龍伝』を観て感じたんです。こうして若い世代が自由に解釈して上演することで、つかこうへいの演劇が未来に生き残っていくだろうと」。そこで用意したのが、『いつも心に太陽を』と、それを元に生まれた『ロマンス』の2015年バージョンだ。「わかりやすくもないし、ラクにはできない作品です。でも、『飛龍伝』や『幕末純情伝』のようなエンターテインメント色の強いものだけじゃないというところを、ここで提示しておくべきだと思った」と岡村。中屋敷も、「自分なりのスパイスを加えたり、意味づけをしないと、そのまま見せるだけでは太刀打ちできないなと思っています」と岡村の挑戦に応える。

『いつも心に太陽を』も『ロマンス2015』も、描かれているのは、水泳の世界を舞台にしたホモ・セクシュアルな関係だ。岡村曰く、「同じ物語を違う視点で書いた」というわけである。だからこそ、「あとから書かれた『ロマンス』に付け加えられもの、削られたものの意味を考える楽しさがある」と中屋敷。さらに岡村はこうも付け加える。「もっと言えば、なぜスポーツなのか、なぜホモ・セクシュアルなのか、その世界に置き換えてつかさんが言いたかったことは何なのかっていうことを考えていくと面白い。何重にも言い換えて、重層的な世界に引き込み、観客の脳の中を爆発させるのが、演劇だと思うんです」。中屋敷も演劇の面白さを「悩んだり考えたりしながら観たもののほうが残るということもありますよね」と話し、「とくに今回は、3つの作品でつかさんのいろんな系譜が観られるので、観る体力をつけてもらえると楽しめるんじゃないかなと思いますし。考えさせるものを作れるように頑張りたい」と締めくくった。幕開けは、35年ぶりに上演される『初級革命講座 飛龍伝』から。つか作品の、そして演劇の、過去から未来を体感したい。

「つかこうへい Triple Impact」は2月12日に開幕、上演は3月2日(月)まで。

取材・文:大内弓子