『スリル・ミー』より (画像左から)福士誠治、成河 『スリル・ミー』より (画像左から)福士誠治、成河

舞台の上には“私”と“彼”、そして1台のピアノ。スリルを求めて過ちを犯したふたりの少年の悲しき物語、異色ミュージカル『スリル・ミー』が年末、再始動する。オフ・ブロードウェイ発、世界各国で上演されている本作は、2011年に栗山民也の演出で日本初演を迎え、その後4回もの再演を重ねてきた人気の舞台。6回目の上演となる今回は、松下洸平(私)と柿澤勇人(彼)、そして成河(私)と福士誠治(彼)の2組のペアが競演する。ともに衝撃の舞台に初めて挑む成河と福士、大注目の新顔コンビに話を聞いた。開口一番、「僕はひねくれた男性客なんです」と、苦笑いで過去の本作の観劇体験を振り返ったのは成河である。

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「ひねくれた男性客だから、あの空間にいるのは苦痛だった。なぜなら多くの女性客がこの作品の“愛好家”でその空気感が劇場に充満しているように感じたから。でも作品自体はとても真面目で、社会的に意味のある、もっと胸ぐらをつかまれるような勢いを感じるものなんです。胸ぐらを差し出して、つかまれるのを楽しみにしていてどうするの!?と。古参のファンに嫌われるかもしれないけど(笑)、僕は胸ぐらを差し出してきたら、ボディブローを返して、気づかせたい。もっと危険がいっぱいの作品なんだよ、と。僕自身、やめてくれ、こんなことは見たくない!と複雑な思いにかられながら舞台に引き込まれていきました。その危険な出会いこそが演劇の本質だと思う」(成河)

問題提起から始まった成河の姿勢とは逆に、福士のほうは「これまでの作品を拝見していないので、僕にとっては初演」と、クールに初挑戦を心待ちにしている様子。ふたりのこの温度差が、すでに“私”と“彼”のアンバランスな魅力となって興味をそそる。

「犯罪を扱っているけれど、人間の深いところをえぐってくる芸術作品といった印象。いい賛否両論が出る作品のように思います。ある狂気、スリルを求める感情は、人間誰しもが持っていると思うんですね。普通はそれを隠すほうが生きやすいし、持っていてもけっして心地良くはない。でも彼らはスリルを実行してこそ超人になる、という考えに行き着いてしまった。その心理が怖いし、観客の皆さんはどう思うのかなと。ストレス社会という言葉がある今にも通じる作品だと思います」(福士)

初顔合わせだが、すでに作品について話し合っているというふたり。「福士君はすごく頭のいい人。僕と福士君で栗山さんを焚きつけて、松下&柿澤の熟練ペアももっと稽古しないと!と思わせるくらいになるのが目標です。えらそうにスミマセン!(笑)」と快調な“成河節”に対し、福士も「僕だけ栗山さんとは初めてなのでアウェイです(笑)。でもアグレッシブな成河君と栗山さんと3人で、十分に時間をかけてセッションしたい。この作品で、自分の何かが変わる気がします」と意欲十分。勢いあふれる新ペアが、これまでにない震撼の時を生み出そうとしている。

公演は12月14日(金)東京・東京芸術劇場 シアターウエストより。

取材・文:上野紀子

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