猫には9つの命がある

「A cat has nine lives.」という英語のことわざは翻訳され、日本人にもよく知られている。猫はなかなか死なない、といった意味だ。

猫は多産で繁殖力が高いだけでなく、生命力もとても強い。人間の基準ではまず助からないであろう重傷からも回復することがある。つい最近もアメリカのフロリダ州で医師が死亡を確認し、埋葬までされた猫が5日後に自力で(!)飼い主の元へ戻ってきたニュースが話題になった。これを紹介した海外紙の見出しが「Rise of the zombie cat(ゾンビ猫の復活)」なのだから周囲の驚きようがうかがえる。

また、猫は身体能力がすぐれているため、そもそもケガを負いにくい。高い所から逆さ向きに落下させてもちゃんと半回転して足から着地できる。猫がどのくらいの高さから落下しても大丈夫なのかは諸説あるが、獣医さんによるブログ「nekopedia」に興味深い記述を発見した。以下に引用する。

この論文ではフライングキャットシンドロームで飛び降りてしまった猫の怪我や生存率をまとめています。平均落下階数は2.65階。そして落下後生存したのは98.8%、さらにその後後遺症により安楽死をした猫を死亡頭数に加えると、生存率は94%であったと記録しています。
(引用元:「~突然高所から飛び降りる猫~フライングキャットシンドローム=ハイライズ症候群=猫高所落下症候群」)

人間なら大ケガを免れない高さから落ちても、猫は深刻なダメージを負いにくいことが研究者によって明らかにされたというわけだ。ちなみに筆者の知人宅で飼っている猫もマンション5階のベランダから落下するアクシデントに見舞われたが、死ぬどころか骨折すらしなかった。ケガをしにくい、ケガしても死ににくい……こうした特性が「9つの命がある」の由来になったのだろう。

 

猫を飼っていると人間の体にも良い影響がある

「猫を飼っている一人暮らしの男性は婚期が遅れる」「犬より猫を飼っている人のほうが平均年収が低い」などとネガティブな情報をしばしば見かけるが、その反面で“猫を飼うことによる良い影響”も見落としてはいけない。

・猫を飼っていると心臓発作や脳卒中の可能性が低下する
・猫のゴロゴロ音には骨折の治癒スピードを上げる効果があり、人間の骨折治療にも使われている
・猫のゴロゴロ音は人間のストレスも低下させる
・ペット(犬も含む)を飼っている家庭の赤ちゃんは健康になる

このようにさまざまな研究により、猫の人体にもたらす好影響が示唆されている。

また、2012年に広島大学の研究グループがおもしろい論文を発表した。子犬や子猫など「かわいいもの」を見た人間は集中力が高まり、見ない人間に比べて作業の正確さ・スピードが向上するという実験の結果が出たのだ。

ただし筆者宅の猫のように、人が仕事している時に限ってキーボード上を占拠するなど、積極的に邪魔をしてくるケースも多いので楽観は禁物である。