みんなで作る、みんなの学校がここにある『みんなの学校

『みんなの学校』(2月21日よりユーロスペースにて公開)  ©関西テレビ放送

子どもにとって社会の入り口であり、重要な場所である“学校”。でも、イジメ、不登校、お受験など、学校に対するイメージはどちらかというとネガティブなものになっているのではないだろうか? 小学校入学でさえ、不安を抱く親も多いときく。その中で、ドキュメンタリー映画『みんなの学校』(2月21日よりユーロスペースにて公開)は、学校の本来の姿に気づかせてくれる1本といっていいかもしれない。

舞台は「大阪市立南住吉大空小学校」。2006年、大阪市で開校した同校は、地域にあるごく普通の公立小学校だ。ただ、その内実はちょっと違う。“すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる”という理念のもと、同校が目指すのは“不登校ゼロ”。児童や教職員だけではなく、保護者や地域住民もいっしょになって、みんなが通い続けることができる学校を作り上げている。

そんな同校にはいつからか他の学校では手をつけられないと厄介払いされた生徒たちがしばしば転校してくるようになった。しかし、同校ではそんな生徒も分け隔てない。特別支援教育の対象となる発達障害のある子も、うまく気持ちを抑制できない子も、みんなが同じ教室に集い、ともに学ぶのだ。

 

真鍋俊永監督

作品は、そんな大空小学校に密着。2012年春から約1年、学校の日常の喜怒哀楽を丹念に映し出す。そこからは実に多くのことが見えてくるに違いない。

手掛けた真鍋俊永監督は「木村校長は“すべての子どもの学習権を保障する、不登校ゼロなんてほんとうは当たり前のこと。うちは、それを学校の理念や目標にする最低の学校だ(苦笑)”と言います。大空小学校はどこにでもある地元の子どもなら誰でも通える公立小学校なのに“当たり前”ではなく、どこか特化して見えてしまう。そこに現在の学校の現実があるのかもしれません。私自身、取材をしながら多くの問いを投げかけられる時間になりました」と明かす。

たとえば同校には、たったひとつの約束がある。それは“自分がされていやなことは人にしない 言わない”ということ。唯一の校則といえるこのルールを破った子どもたちは、やり直すために校長室へやってくる。ただ、この場は、ともするとなりがちな大人が頭ごなしに反省を促す場ではない。たとえばケンカをした子どもに対し、木村泰子校長はそうなった理由や、そのときにどんな気持ちになったかを徹底的に考えさせる。この過程を経たとき、子どもたちははじめて納得する自分の答えを導き出す。それは少し大人になった証拠なのかもしれない。

「子を持つ親である自分自身も、ついついめんどうで怒る理由を説明しないまま子どもをしかりつけてしまいがち。でも、それでは根本の解決にはなっていないんじゃないか? そもそもめんどうというのは大人の事情であって手抜きともいえる。すごく反省しました(苦笑)」と真鍋監督は語る。

子どもたちにとって何が大切なのか? ほんとうの意味での、大人の、地域の、学校の役割とは何か? 親世代はいろいろと考えることが多いだろう。また、学力テストの成績だけでは決して計ることのできない、どんな子どもにもある豊かな才能やすばらしい能力を映画に登場する子どもたちの姿に気づくに違いない。一方、本作が映し出すケンカをしたり、仲直りをしたり、勉強をしながらともに喜んだり泣いたりする学校での時間は、子どもたちも自分に身を寄せて一喜一憂しながら時を共有するはずだ。

真鍋監督は「大空小学校の子どもたちひとりひとりがどう変わり、どう羽ばたいていくのかをぜひみてほしい。また、当事者の小学生がこの作品をみてくれたとき、どんなことを感じてもらえるのか? いまからとても楽しみにしています」とメッセージを送る。