華やかなセレモニーに隠された「批判への配慮」

2015.2.23 16:11配信
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 (C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

第87回アカデミー賞は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が作品賞、監督賞など4冠に輝き、幕を閉じた。オスカー像を手に、イニャリトゥ監督は関係者への感謝とともに、昨年監督賞を受賞した同じメキシコ出身の盟友アルフォンソ・キュアロン監督(『ゼロ・グラビティ』)の名前を挙げ、移民の尊厳を訴えるスピーチを行った。

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また、今年は1月に各賞ノミネートが発表されたタイミングで、「候補者が白人ばかり」とアフリカ系アメリカ人の市民権運動団体が異議を申し立てた。実際に、主演・助演候補となった20人の俳優はすべて白人。『セルマ』(原題)でマーティン・ルーサー・キング牧師を熱演した英俳優のデヴィッド・オイェロウォや、同作のメガホンをとったエヴァ・デュヴルネ監督はノミネートされなかった。

授賞式ではこんな場面も…。司会を務める俳優のニール・パトリック・ハリスが、会場でセレモニーを見守るオイェロウォを紹介し、来場者から拍手が起こると、ハリスは「今さら拍手しても遅いよ」とチクリ。その後発表された歌曲賞では、コモンとジョン・レジェンドによる『セルマ』の主題歌“Glory”が見事オスカーを獲得している。もちろん、楽曲のすばらしさが純粋に評価された結果だが、前述の“異議”を鑑みると、「アカデミー側が、批判に配慮したのではないか」と勘繰られても仕方がないかもしれない。

米国内に根強く残る人種問題に加えて、外国語映画賞が発表される際には「今、世界は文化や宗教、国籍によって分断されている」(プレゼンターのキウェテル・イジョフォー)、「でも、映画館という空間なら私は一つになれる」(同じくプレゼンターのニコール・キッドマン)と複雑化する国際情勢に対するメッセージもあった。

映画は、時代を映し出す鏡。アカデミー賞もまた例外ではなく、多様性が尊重されるべき現代社会からは逃れられないのだ。全米で大ヒットを記録し、作品賞をはじめ6部門にノミネートされていた『アメリカン・スナイパー』が、音響編集賞のみの受賞で終わったことも暗示的である。

第87回アカデミー授賞式
2月23日夜9時から、WOWOWプライムでリポート放送(字幕放送)

文:内田 涼

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