部屋の性能や生活パターンをAIで分析・学習するシャープのエアコン

シャープは10月4日、業界で初めて、クラウドのAIで部屋の室温や設定温度までの到達時間など部屋の状況を分析したり、ユーザーの不在などの生活パターンを分析・学習したりしながら、省エネ運転制御を行う無線LAN内蔵の「プラズマクラスターエアコン Xシリーズ」9機種を発表。10月25日から発売する。代表機種の冷房能力4.0kWのAY-J40X2の価格はオープンで、税別の実勢価格は28万円前後の見込み。

IoT HE事業本部の中島光雄 副事業本部長 兼 空調・PCI事業部長は「これまでは購入時のスペックが全てで、それ以降は機能が進化しなかった。今回、新たな取り組みとして、購入後もソフトウェアのアップデートで最新機能の利用が可能になるようにした」と語るように、新機能はもとより、購入後の省エネ運転がバージョンアップする点が新しい。

すでに発売済みの同社の無線LAN内蔵でAIoTクラウドサービスの「COCORO AIR」に対応した機種であれば、新製品と同じ主な新機能を使うことができるという。購入後も、機能が進化するエアコンだ。ただし、従来機種と最新機種ではハード面の違いがあり、新製品とまったく同じ省エネ性能が得られるわけでない。

Xシリーズは、COCORO AIRが進化し、部屋の設定温度までの到達時間などから「冷えやすい」「暖まりやすい」といった部屋の性能を把握したり、リモコンの操作情報から外出や帰宅時間、起床や就寝時間などユーザーの生活リズムを分析・学習する。

例えば「省エネ立ち上げ制御」という運転では、スマートフォンの専用アプリCOCORO AIRを使って外出先から運転をオンにすると、普段の生活パターンからエアコンが帰宅時間を推測し、部屋の性能の学習結果から効率的な運転をスタートする。従来は遠隔操作すると同時に、フルパワーで運転を開始するなどの無駄が多かった。

また、起床時間に合わせて制御する際も、クラウドから天気情報を入手して、翌朝の冷え込み状況などから、起床時間に合わせた効率的な運転も可能になった。

「省エネ温度シフト制御」では、学習した外出時間に合わせて自動的に運転をゆるめるため、外出する直前までフル稼働で運転していた従来よりも省エネになる。この制御では、運転をゆるめたことをスマホに通知し、気になったかどうかを問いかける。「はい」や「いいえ」でフィードバックすると、それを反映して次回から制御を見直すように学習しながら進化していく。

1日の積算消費電量を17%削減

シャープは、AIoTを使った「省エネ立ち上げ制御」と「省エネ温度シフト制御」を組み合わせた運転によって、自社基準の標準的な冷房の使い方をした場合でCOCORO AIRがないケースと比較して、1日の積算消費電力量で約17%削減するという。

エアコンは1998年にトップランナー制度を導入してから期間消費電力量(kWh)を98年~03年の5年間で約17%、03年~08年の5年間で約11%と大幅に下げてきたが、11年~16年の5年間では約3%の削減にとどまっている。ハードウェアの改良による省エネ性能の向上に限界が生じつつあるのだ。

シャープの新しい省エネ提案は、使い方の無駄をAIとIoTを組み合わせたAIoTの力で削減するという発想である。他社製品と比較するには基準が曖昧なため、販売の現場では苦労しそうだが、新しい省エネ提案として注目されそうだ。

税別の実勢価格は8.0kWのAY-J80X2が37万円前後、7.1kWのAY-J71X2が35万円前後、6.3kWのAY-63X2が33万円前後、5.6kWのAY-J56X2が30万円前後、3.6kWのAY-J36Xが27万円前後、2.8kWのAY-J28Xが26万円前後、2.5kWのAY-J25Xが24万円前後、2.2kWのAY-J22Xが23万円前後の見込み。