撮影:小林裕和

ぶう:ボクは影響どころじゃないですよ、純度100%ですよ。ボク元々音楽もあんまり知らないし、洋楽も聞かないし、そもそも大槻ケンヂしか聴かないんですよ。

大槻:え~、そりゃやばいよ、他のも聴いたほうがいいよ~。見識が広がるよ~。

ぶう:大槻さんのコラムに出てくるようなアーティストを聴いてみても全くピンとこなくて。あんまり音楽に馴染んでないんでしょうね。バンドを始めて自分が歌詞を書くってなったときに大槻ケンヂしかスタイルを知らなかったから…。ボクの歌詞には大槻ケンヂのメソッドしか無いんです。

でもボクの想いはあんまり大槻さんに届いてない気がするんですよ。ボクはいつか大槻さんが聴くだろうと思って「俺は大槻チャイルドだぞ!」っていう気持ちを込めてるのに…。

団長:オマエは込めすぎなんだよ!

大槻:あのね、でもチャイルドというのは怖いところがあってね…。昔のプロレスで言うと新日本プロレスに対してUWF、猪木に対しての前田っていう文脈があるんですけど。人間、特に男の子というのものは、自分に影響を与えたものを最終的には殺そうとするんですよ…。チャイルドはファーザーを殺さないと、父親を越えられないから。

団長:ぶうから感じるよ…。「いつか大槻ケンヂになってやろう」っていう雰囲気を…。

大槻:だから、ボクとしては、リスペクトしてくれるのは嬉しいけど、そういう親殺しの法則に従われると怖いやね(笑)。好々爺っていうのかな? 「オーケンはおじいちゃんだから優しくしてあげよう」というポジションにシフトしてほしいんだよな。

っていうか…あのさ、V系はもっと殺さなければいけない先輩が沢山いるんじゃないの?

 

撮影:小林裕和

――やめましょう! そういう話は! そういえば、大槻さんは以前エッセイなどで「筋少はV系じゃない」と当時のV系ファンの子に言われてたという話を書いてらっしゃいましたが、こうやって今V系のミュージシャンにはリスペクトされているじゃないですか。

大槻:ボクねえ、このあいだテレビの収録で高田馬場AREAに行ったんだよ。後ろからこっそり観てたんだ。そしたらお客さんが一斉に振りつけしててさ、若いVバンドの振りに従って、楽しそうに右に左に走ったりしてて。ああいうのを観ていて気づいたんだ。
自分がV系かどうかはわからないけど、俺はバンギャになりたかったんだって気づいたんだよ。50歳近くなってやっとそれがわかってきた。

一同:!!(笑)。

大槻:オレはバンギャになりたかったんだよ。皆で入待ち出待ちして、ガラガラバッグ持って、日本中回るんだよ。これは何のたとえかわかる? バンギャの一番好きなものは「旅」なんだよ。彼女たちは「ここではないどこか」「今ではないいつか」へ行きたいの。僕も49歳の今でもそう思って生きている。仲の良い友達とずっと旅をしてたいの、バンドはそのお題目なの…っていうことを言うとバンギャから怒られるんだけど。ひとつの見立てとして。だからつまり「ああ日本のどこかに私を待ってる人がいる」的な『いい日旅立ち』がしたかったのよオレ。

seek:ツアー言うても僕らはライブハウスの外へ出てないじゃないですか。僕らがメイク5時間やってる間にお客さんはその土地の美味しいものを食べたり満喫してるんだろうなぁ~、とか思ったりしますね(笑)。

大槻:旅の満喫度でいえばお客さんの方があると思うね。僕もツアーは好きなんだけど、なりたかったのは結局「バンギャ」を例とするような、「旅人」になりたかったんだ。職業不詳の人生的バックパッカーね。バンドマンって職業不詳みたいなところあるじゃない。だから皆がリスペクトしてくれる「大槻ケンヂ」って人は「旅人」のことかもしれないね。旅人っつーか風来坊ね。手羽先屋じゃないの方のだよ。

団長:高等遊民ですね。

大槻:高等はつかないよ(笑)、金はないから(笑)。ただの遊民。松任谷由実さんじゃない方の。単なる「遊ぶ民」ですよ。「なんだかわからないけど奇抜な格好をして好き勝手なことをやっているように見える人」じゃないかなあ。

団長:それすらも憧れでしたけどね。俺は筋少のライブを生で見たのは遅くて復活後の武道館なんですけど、オープニングの『サンフランシスコ』のシンセ音だけで泣いたんですけどね。やっぱり、ライブのノリが好きなんですよ。バンドとしての筋少ってとにかくレスポンスをしたがるじゃないですか。お客さんと絡みたがるし、レスポンスを求めたがるし。歌にコーラスが多かったり、一体型のエンターテイメントを求めているバンドなんだなって、さっき名前が出たすかんちさんや聖飢魔IIさんもそうだと思うんですけど、共通しているのはエンターテイメントが強すぎてV系という括りからは括れない人たちなのかなあと。そういうところに憧れちゃったから、ココにいる4人のバンドはV系からは少し外れてるんですよ。

撮影:小林裕和

seek:俺は結構ヴィジュアル系やってきたつもりやで(笑)?

団長:えっ…。

大槻:前にMSIのライブを見た時凄い衝撃を受けたのを今も覚えていて、僕の考えるライブのやり方と違うことをやっていたので「ひええ、スゲー!こういうのもあるんだ」って。

seek:ライブの途中で芝居演ったりしてますからね。

大槻:僕も竹馬履こうかなと思ったもん。そうだ、こないだMoranも観たんだよ。そこでも衝撃を受けてね。ギターの子(Sizna)は橘高くんが好きなのかな? あんなに動きまわるギターの人は橘高氏以外で生まれて初めてみたよ! 釣り上がったマグロみたいだよね。かっこいい、ビチビチ踊ってた。ベースの子(Ivy)もずっと三角立ちをしていて、ああいう発想もいいねえ。それで影響を受けてライブでやったら膝が痛いんだよね(笑)。若いうちだけだよああいうことができるのは。逆に僕の方が最近は自分よりも若いバンドを観て影響を受けますよね。