立花萬平役の長谷川博己

 インスタントラーメンを生み出した夫婦の知られざる物語を描いた本作で、ヒロイン福子(安藤サクラ)の夫で実業家の立花萬平役を演じている長谷川博己。「朝ドラヒロインの相手役俳優にはいいことがない」。そんなジンクスを何となく信じて敬遠してきたものの、40代に突入して考えも変わり、今最も勢いがあるドラマ枠へ参戦した長谷川が、撮影真っただ中の現在の心中を語ってくれた。

-第1週試写会後の会見では「面白い」とおっしゃっていましたが、改めて、このドラマにどのような魅力を感じていますか。

 福田(靖)先生による脚本のテンポや展開がすごく面白くて、戦時下にありながら、どこか朝ドラらしい明るさを残していて、そのバランスがものすごくいいですよね。キャラクターも生き生きとしているので、役者なら「自分も出たい」と思うんじゃないかな。実際、共演者の皆さんも楽しんでやっていらっしゃるので、そこも伝わればうれしいです。

-インスタントラーメンの開発者・安藤百福さんをモチーフにしたキャラクターを演じることについて率直な感想は?

 インスタントラーメンは今や世界中の誰もが知っている商品で、すごい発明ですよね。それがどうやって誕生したのかという過程にはとても興味がありますし、演じられることはとても光栄です。

-ドラマでの萬平はどのようなキャラクターでしょうか。

 幼い頃に両親を亡くして、親戚の家を転々としていた暗い過去があるので、台本のト書きには「ため息ばかりついている」とありますが、ネガティブなばかりではなく、明るい印象もあります。それは、若くして会社を設立し、事業を興してから、いつも自分で人生を切り開き、孤独に生き抜いてきたたくましさも持ち合わせているからだと思います。

-ご自身と共通する部分はありますか。

 僕も物を作るという職人肌なところは共感できます。悩んだときに、パッとしたひらめきで打開することもあるので、そんなところもいろいろなものを発明していた萬平と似ているかもしれません。

-役作りではどのような工夫をされていますか。

 今回、長いスパンで毎日のように撮影をする朝ドラでは、細かく作り込むというよりは、役を自分に引き付けた方がいいのかな…と考えて臨んでいます。なので、いい意味で少し楽に演じるようにしています。自分の部分を出したり、自分に近づけながら演じたりしています。

-やはり普通のドラマと朝ドラでは臨み方が違うようですね。

 そうですね。15分間という時間の中で、視聴者の方に楽しんでもらうためには1時間や2時間のドラマとは違うと思いますし、時間も限られているので、それだと心も体も持ちません。悩むのが性なので自問自答しながらやっていますが、最近はペースをつかめているかなという気はしています。

-注目してほしいところはどこでしょうか。

 注目というか、萬平が第1話で下手な関西ことばを話すので、どう思われるか不安です(笑)。2、3話で「僕の関西弁、気色悪いか?」と尋ねるシーンがあるので、そこでわざと下手な関西弁になっていることを分かってくださればうれしいです。

-萬平はやがて福子と結婚しますが、彼女のどこに引かれるのでしょうか。

 僕も「どこなのかな?」と考えながら演じていました。理屈っぽく言えば、咲姉さん(内田有紀)の結婚式で見た福子の姿や、偶然の出会いが重なったからだろうけど、実際、恋をするのに理由はないですよね。お互いにピンとくるものがあったのでしょう。映像になると、どういうふうに映っているのか気になっていましたが、見てみたら、この2人が引かれ合うのは分かるな…と納得できました。

-長谷川さんにとっての福子の魅力とは?

 すごく明るくて、ネガティブなことをポジティブに変える魅力があります。この人と一緒にいたら幸せになれそうだなと感じますし、そんな前向きなところに萬平も引かれたのだと思います。

-成功しては失敗する“敗者復活戦”を繰り返す萬平にとっては、ポジティブな福子はベストパートナーですし、視聴者も見ていて朝から気分が上がりますね。

 はい。すごく幸せなドラマになっていると思います。戦時下なのでそういうシーンもあるけれど、それらを忘れさせるぐらいの強いエネルギーを萬平たち夫婦から感じてほしいですし、萬平みたいに負けが多い人生でも、やり直すのに遅いことはないという希望を持ってもらえたらいいですね。

-まさに、幸せで「まんぷく」になれるドラマですね。ちなみに、インスタントラーメンはお好きですか。

 毎日でも食べたいぐらい大好きです。成長期の中学生の頃は1日5食とか平気で食べていて、そのうちの1食はインスタントラーメンでした。アレンジもよくしていて、一番は納豆と大根おろしを混ぜたものをトッピングするのが好きです。

(取材・文/錦怜那)