プッチーニの美しい音楽がいろどる小悪魔少女の悲劇

2015.3.9 16:30配信
新国立劇場オペラ「マノン・レスコー」 撮影:寺司正彦/提供:新国立劇場 新国立劇場オペラ「マノン・レスコー」 撮影:寺司正彦/提供:新国立劇場

3月9日(月)に幕を開ける新国立劇場のプッチーニ《マノン・レスコー》新制作上演。7日、舞台での最終通し稽古(ゲネプロ)がプレス公開された。

新国立劇場オペラ「マノン・レスコー」のチケット情報

この舞台は4年前の3月に東日本大震災で中止を余儀なくされたもの。その時とほぼ同じメンバーを再結集しての今回の上演には、出演者・スタッフも通常以上の思いがあるだろう。

プッチーニ自身が「私に苦しみを与えなかった唯一のオペラ」と述べているように、彼の3作目のオペラ《マノン・レスコー》は初演から大成功を収め、オペラ作家としての出世作となった。主人公は18歳の美少女マノンと青年騎士デ・グリューのふたり。マノンは「金」や「恋」に依存しがちな気まぐれさも魅力の、魔性の女だ。物語はふたりの出会いから始まり、マノンに振り回される男たちと、その魔性によって最後は彼女自身も破滅していく悲劇を描く。

そんな小悪魔を演じるのは、新国立劇場初登場の美貌のソプラノ、スヴェトラ・ヴァッシレヴァ。小顔でバランスのよいスタイルが舞台に映え、コケティッシュな魅力を振りまく。小柄ながらしっかりした芯のある声と迫真の演技で、終幕の有名なアリア「ただひとり、絶望し見捨てられて」の悲痛な叫びなど圧巻だ。

デ・グリュー役のグスターヴォ・ポルタ(テノール)も、持ち前の強くて艶のある声を存分に響かせる。情熱的な歌唱は、たとえば第3幕終盤の短いがひときわ印象的な「見てください、僕は狂っている」の狂おしい心情にぴったりだし、終幕の二重唱では最高音のドもばっちり聴かせてくれた。

白を基調に、具象を最小限に抑えたシンプルな舞台装置の中で、衣裳やメイクで登場人物の属性が示されている。マノンを妾にする金満家ジェロントの顔は白塗りだ(!)。気持ち悪い動作や歌い口と相まって老人のスケベ度を強調しているよう。演じる妻屋秀和(バス)の芸達者ぶりに拍手。

マノンの兄レスコー役のダリボール・イェニスの二枚目のバリトンは、常に妹の幸せを優先して行動するレスコーの、ある意味の一途さにふさわしい。第1幕で学生とトランプに興じる彼のカード捌きも隠れた見どころ!

デ・グリューの友人エドモンド役の望月哲也は、ほれぼれする美声で第1幕の若々しい雰囲気を盛り上げる。新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)の熱演とともに見逃せないポイントだ。

上演時間は、第2幕後の休憩を含めて約2時間40分。21日(土・祝)までに5公演が行なわれる。

文・宮本明

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