250円のグラスワインや生ビールやホッピー、バイスを痛飲しながら、
競い合うように連れと唐揚げを食べる。
連れが「焼酎中おかわり」とほろ酔いで繰り返す。
ここの焼酎は甲類の王様「金宮」で、「マイルドにするため」炭が入れられている。
「どれほどマイルドになるかはよくわかりませんけどね!」と ”店鳥” がこれまた元気良く言う。
さて、厨房のテレビでは『志村どうぶつ園』がかかっている。
動物の言葉がわかるという外国のおばちゃんが、人気犬・わさおの言葉を通訳している。
『 わさお が、「 わさお っていう名前はどういう意味?」って聞いてるわ』。
思わず、”店鳥”と連れとであはははと笑う。
このおばちゃんが本当に動物の言葉がわかるなら、きっと牛も豚も食べられないぜ…。
こんなに美味しいチキンだって…!
ふと連れが唐揚げでてらてらになった口をぬぐいもせず、
「動物図鑑欲しくなっちゃったなあ」とどうでもいいことをつぶやく。
「やっぱ図鑑って普遍なんだよなあ」と言いつつ鶏皮をぱりぱりかじる。
「キミ、何落ち込んでんのか知んないけど、そんな暇あるなら図鑑作りなよ図鑑。
せんべろ酒場人間図鑑。酔ったあなたはワサオ型とか、チキン型とか。いいと思うよ」
「なるほど、それは面白いかもしれない…。いいこと言うねアンタ! 
唐揚げみたいな頭してるくせに、くのくのくの~」
禁断の唐揚げを前にした私の脳みそは、スーパーポジティブバカであり、
次は何味の唐揚げを頼むか、それだけでいっぱいになっていたのだった。

     


<今宵お会計>
生ビール 380円
ホッピー 400円
バイス 400円
焼酎中×3 600円
ワイン 250円
冷やしトマト 300円
皮せんべい 200円
唐揚げ 250円×2
とり刺 480円
二人で合計3510円

【店舗情報】
荻窪「鶏肉専門店 鳥繁」
住所:東京都杉並区上荻1-6-2
営業時間 :12時~22時、土日祝(~ 21時)

 

文筆業。大阪府出身。日本大学芸術学部卒。趣味は町歩きと横丁さんぽ、全国の妖怪めぐり。著書に、エッセイ集「にんげんラブラブ交差点」、「愛される酔っぱらいになるための99の方法〜読みキャベ」(交通新聞社)、「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)など。「散歩の達人」、「旅の手帖」、「東京人」で執筆。共同通信社連載「つぶやき酒場deep」を連載。