先日、子どもの虐待に関するこんなニュースが報道されました。

子どもの心を言葉や行動で傷つける「心理的虐待」が、2017年度までの5年間で3倍に増え、同年度の虐待の総件数の半数を超えたというのです。厚生労働省の調査でわかったそうです。

その背景には、子どもの前で親が配偶者に暴力をふるう「面前DV」なども心理的虐待にあたるという認識が広まり、児童相談所に通告するケースが増えたことがあります。

暴力には言葉の暴力も含まれます。言葉の暴力とはよく聞く言葉ですが、目に見えないだけにわかりにくいものです。

よく口ゲンカをする夫婦でも根本ではつながっている夫婦もいれば、離婚の危機に瀕している夫婦もいますが、もし自分たちのケンカを目撃することで、子どもの脳に虐待にも値する影響が出るとしたら、どうでしょうか。

友田明美著『子どもの脳を傷つける親たち』にも、面前DVが与える子どもの脳への影響についての言及があります。

どんな影響なのか、この際、夫婦のあり方を見直すと同時に、知っておきましょう。

目に見えない虐待とは?

虐待には大きく分けて、以下のものがあります。性的虐待、ネグレクト(育児放棄)、身体的虐待、そして心理的虐待です。

どれもしてはならないものですが、あきらかに倫理的に許されないことが目に見えてわかりやすい他の虐待に比べて、心理的虐待は、目に見えない虐待だけに判断をあやまる危険性の高い虐待といえます。

2004年に改正された児童虐待防止法では、以下の行為も虐待に含まれると定義しています。

「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者〈婚姻の届出を出していないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む〉の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう)」

つまり、一見単なる夫婦ゲンカのようでいても、子どもの前で夫婦のどちらかがどちらかの人格を否定するほどののしったり、言葉で追い詰めたりするような行為を子どもに見せることは、14年前の時点ではっきりと虐待と定義されているのです。

子どもの脳を傷つける親たち』でも、近年の調査で増加している心理的虐待の内訳をみると、面前DVは全体の半数に迫る勢いで増加しているとのことでした。

以前は、「夫婦ゲンカは犬も食わない」といい、他人が口出しすべきではない、というのが定説でしたが、あまりにひどい夫婦ゲンカにはむしろ周囲が気づいて介入すべきなのかもしれません。

どんな影響がある?

面前DVを目撃した子どもは、たとえ言葉が出る前の赤ちゃんであっても、つよいストレスを感じるといいます。

さらに、多くの子どもが、家族間の不和は自分に責任があると考え、罪悪感を持つのだそうです。自分に直接矛先が向いていない夫婦間のことであっても、被害者である母親(父親である場合もあります)を守れなかったことに対し、罪悪感を抱くのです。

そういった罪悪感が心的外傷(トラウマ)となり、子どものこころと脳を蝕んでいく、と友田さんは書いています。

たとえDV被害から逃れて、被害者の親(ここでは母親とします)が子どもを連れて離婚しても、その後、別れた父親と面会した子どもが健康面で悪い影響を受けることも、研究からわかってきたそうです。

父親とまったく面会しない子どもに比べて、面会した子どもは内向的問題(ひきこもり、身体的訴え、不安/抑うつ症状など)が12.6倍も増えるという研究結果が出ているそうです。

内向的問題は、はっきりした病名がつくわけではないことも多く、ケアされずに大人になり、常に心にどこか不安を抱えたまま日々を過ごしている人もいるかもしれません。

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