ケラリーノ・サンドロヴィッチ  (撮影:源 賀津己) ケラリーノ・サンドロヴィッチ (撮影:源 賀津己)

演劇をベースに、音楽、映画などさまざまなフィールドにまたがり独自のセンスを発揮しているナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。今年は3本の演劇作品を手がけるが、福田恆存作『龍を撫でた男』の演出に続いては、自身の劇団ナイロン100℃で新作『百年の秘密』に取り組む。構想中の新作について話を聞いた。

ナイロン100℃ 38th SESSION 「百年の秘密」チケット情報

昨年末に、「笑いからいったん離れたい」という気持ちが芽生えたというKERA。「笑いに飽きたわけではないんですけど、コメディという括りがあると、笑わせることが必須条件になって取りこぼすものもあるんじゃないかと」。その中で浮かんだ題材は、10年以上温めていた“ふたりの女性の半生”だ。「『あれから』(2008年)という作品で幼なじみのふたりの女性の話をやりましたけど、あれは過去を絡めながら、あくまでも現在を描いていた。今回はふたりの思春期、20代、中年期、老年期、死後を均等に描くつもりです。普通に時系列に進むのか逆行していくのか、もしくはバラバラにしてコラージュのようにするのか、構成はまだ決めていませんが、いろんな方法があると思います」。

ふたりの女性に扮するのは、犬山イヌコと峯村リエ。「別に松永(玲子)や村岡(希美)でもできると思うんだけど、最初に浮かんだのはこのふたり。やっぱり劇団健康(ナイロン100℃の前身)時代から一緒っていうのが大きいのかな。このふたりのシーンを書くのが好きだし、凸凹なシルエットも面白いでしょ」。若手が加わりさらなる充実を見せるナイロン俳優陣に加え、ゲストの萩原聖人、山西惇らがふたりの人生に絡んでいく。

ところでKERAは長年、“女性を描くのが上手い作家”と言われてきた。自身も「男ふたりの物語を書くことには全く興味がなかった」とキッパリ。「女性のことはわからないから想像で書いてるだけ。要は……不可解だってことなんですけどね。女性作家が書く女性ってどこか言い訳めいた感じがするでしょ? 僕は『こう見えるよ』ってところから描いているから、その不可解さに説得力があるのかなとは思う」。そうしたKERA目線からすると、“女性の友情”も不可解なもの。「男に比べて女性は、環境などによってサバサバと生き方を変えていく印象がある。だから女性同士の友情ってピンと来ないんですよ。友情とはまた違う、もっと複雑でデリケートな関係を描ければ」。

笑いにとらわれないKERAから生み出されるドラマは、どれほどの深さで観客を飲み込むのだろう。

取材・文:武田吏都

公演は東京・本多劇場にて4月22日(日)から5月20日(日)まで開催。チケットは2月25日(土)より一般発売する。チケットぴあでは2月16日(木)まで先行抽選を受付。