リサイクルインクでエコリカがダントツの首位

インクジェットプリンター用のインクは、家電量販店では来店客が買い物ついでに購入する「最寄品」に位置づけられることが多い。しかし、実際に販売員に聞いてみると、意外にも顧客の問い合わせが多い「接客タイプ」の商品であるという。売り場を見れば一目瞭然で、所狭しとぶら下がっているインクを見たときに、どれを選べばいいのか迷う顧客は多いからだ。家電量販店の売り場担当者に、インク選びのコツを聞いた。

インク選びのコツ

兵庫県のエディオン伊丹店でデジタル機器を担当する石川元之(まさと)主任は、「年賀状シーズンに年に1回だけプリンターを使うお客さまは、メーカー純正のインクを購入するケースが多いが、会社経営や個人事業主など普段から印刷枚数が多いお客さまは、コストパフォーマンスを求めて、互換インク(リサイクルインクと汎用インク)を選ぶ人も増えている」と語る。プリンターを使う頻度や印刷物のボリュームによって、インク選びも変わってくるようだ。

販売量で圧倒的に多く売れるのは純正インクだが、コスパから互換インクであるリサイクルや汎用インクを選択する人も少なくない。全国の主要家電量販店・ネットショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、2017年(1月~12月)のインクのメーカー別販売数量シェアで1位はエプソンの39.1%、2位はキヤノンの33.9%と純正インクが圧倒する。一方で、リサイクルインクのエコリカが9.7%で3位に食い込んでいることがわかる。

また、BCNが18年8月に実施したインターネットによるユーザーアンケート調査(n=700)でも、「購入したプリンター用インクの種類」について聞くと、84%がメーカー純正インクを購入し、互換インクが14.8%(汎用インクが7.7%、リサイクルインクが7.1%)となっており、「BCNランキング」の販売台数シェアとほぼ同じ傾向を示していることがわかる。

ここで3タイプあるインクの種類を簡単におさらいしておこう。純正インクは、カートリッジもインクもプリンターメーカーが製造する、文字通りメーカーお墨付きのインクだ。信頼性が高く、不具合があったときのメーカー保証も利くので、もっとも安心だ。しかし、価格が高いのがネックになる。年に一度の印刷なら気にならないかもしれないが、プリンターを日常的に使っている人にとっては、インク代がばかにならない。

次のリサイクルインクは、カートリッジは店頭の回収ボックスで回収したメーカー純正のものを使い、そのなかに独自のインクを詰めたもの。純正インクより価格が安くて財布に優しい上、カートリッジが純正のものであるため、装着方法や使い方も同じである。また、カートリッジをリサイクルして使うため環境にやさしい。

ユーザーアンケート調査のクロス集計でも、リサイクルインク購入者が挙げた購入時に重視するポイントは「低価格」がもっとも多く、次に「プリンターとの親和性」「安心感・信頼性」と続く。ちなみに、純正インク購入者の重視点は「プリンターとの親和性」「安心感・信頼性」「プリンターの保証」「低価格」と逆の傾向にあることが読み取れる。

最後の汎用インクは、カートリッジもインクも自社で製造するもの。価格はリサイクルインクよりもさらに安くなるが、カートリッジが純正ではない点が、リサイクルインクとの大きな違い。ケースは少ないものの、純正インクと異なる使い方に戸惑ったり、プリンターとの相性に多少なりとも不安が残る。

画質についてはどうだろうか。エディオングループの100満ボルト 金沢本店の小林泰士氏は、「純正インクとそれ以外では、一瞬見ただけではどちらも遜色なくキレイだが、互換インクは例えば空の青い色が薄くなるなど、純正との違いが分かってしまう。しかし、ビジネス書類や文書の作成が多い人にとっては問題にならないだろう」と指摘する。

ほかの家電量販店の店長も「高画質用の用紙に印刷したときは純正と互換インク(リサイクルと汎用インク)でそん色はないが、安価な紙を使って印刷したときは色にじみなどが多少の差が生じる。写真好きで画質を気にする人は気になるだろうが、そんな人はそもそも安い用紙を使わないだろう」と語る。

写真などを趣味にする人は、ウルトラファインの印刷に適した用紙を選ぶだろうが、プリンターを普段使いする人にとって、画質にそれほど大きな違いがないのであれば、やはり互換インクの安い価格が魅力的に映るようだ。

いざというときのサポートでエコリカを評価

リサイクルインクと汎用インクで気になるのはサポートだ。純正インクではないため、万が一プリンターが故障したときに保証は利かないからだ。この点、販売員はリサイクルインクのエコリカへの評価が高い。エコリカでは、プリンターの修理にかかった費用を代わりに支払ってくれて、修理期間中も要望があればプリンターを貸し出すサービスを行っている。

前出の店長は「エコリカは他社と比べてもサポートの電話がつながりやすいし対応もいい。(トラブルが起きたときも)店側に手間がかからない。回収ボックスのCM効果もあって、お客さまもリサイクルインクというより、エコリカという社名の認知度が高い」と、いざというときに顧客をフォローしてくれるエコリカのサポート体制は、販売する側にとっても安心感があるようだ。

なお、BCNランキングの互換インクのメーカー別販売台数シェア(17年1月~12月)で圧倒的なトップはエコリカだ。78%という高いシェアを確保している。リサイクルインクに絞ると、エコリカのシェアはさらに高まる。17年の1年間で91.9%、18年の1月~8月の直近8か月をみても92.7%という圧倒的なシェアを獲得している。

「エコリカのブランドカラーであるグリーンを求めて購入するリピーターの方は多い。長年取引している実績や安心感も、高いシェアの獲得につながっているのではないか」と、石川主任も小林氏も納得の様子だ。業界で初めて全国の家電量販店に回収ボックスを設置したエコリカのこれまでの啓蒙活動が、販売員にも浸透している様子がうかがえる。

100満ボルトの小林氏は、「基本的には店側からどれかを強力にオススメすることはせず、自己責任で選んでもらっている。ただ、種類の違いについて質問を受けるケースは多いので、分かりやすく説明している」と語る。店側から特定のタイプをプッシュすることはしないが、顧客の使い方によってアドバイスしてもらえるというから、迷ったときは素直に販売員に聞いてみよう。

ユーザーアンケート調査でも、インクを購入する際に店員の話が参考になったと答えた人は、「とても参考になった(27.3%)」「参考になった(42.4%)」「少し参考になった(15.7%)」と合計で85.4%と高かった。

インクのタイプの違いを分かりやすく説明してもなお、純正かそれ以外かで悩んでいる顧客に対して小林氏は、「『一度、試しに使ってみたらいかがですか』とリサイクルインクを提案する」という。費用的な負担は純正より大きくないので、使ってみて気に入らなかったら純正派になるし、使って満足ならリサイクルインク派になる。

実際に小林氏は、「そうしたきっかけでリサイクルインクを使ってみた顧客が、その後もリピーターとして使い続ける例は少なくない」という。BCNのユーザーアンケート調査でも、各インクの種類別の利用者に対して信頼度を1点~5点で採点してもらったところ、リサイクルインク利用者の約3分の2(66%)が4点以上を付けており、純正利用者の26.6%、汎用インク利用者の40.8%、詰め替えインクの60%よりも高かった。こうした点もリピーターが多い裏付けとなりそうだ。

なお、インクを買い替えるときは、使わなくなったインクカートリッジを一緒に店に持っていきたい。多くの家電量販店では、インクカートリッジ1個につきポイントの付与や10円で引き取ってくれるサービスなどを展開しているからだ。カートリッジのリサイクル回収にもつながって環境にも優しい行動として覚えておきたい。

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