幼稚園、保育園内の壁面に飾られている絵。周りの子の絵と比べて上手に描けていないとつい、「もっと、ここをこう描いたらいいよ」とアドバイスしたくなりませんか。

でも、もしかしたら、その指導が子どもの豊かな表現力を潰してしまうかもしれません。

「テキトー母さん」流子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話しします。

遠足の思い出の絵がみんな同じ!?

©あべゆみこ

 子どもたちが水族館へ遠足に行きました。後日、園でのお絵描きの時間、お題は“水族館の思い出”でした。

  • たんぽぽ組…先生が見本でタコの絵を描きました。すると、みんなタコの絵になりました
  • ひまわり組…先生は手本を示しません。いろんな魚をそれぞれ描いています。魚とは思えない黒い丸をグルグル描いた子、水族館のエレベーターを描いた子、遠足で食べたお弁当の絵を描いても「OK~」としています

もしかしたら、黒いグルグルを描いた子は、水槽の下に沈んでいた石を描いたのかもしれません。

子どもの興味関心は様々です。にもかかわらず、ここで手本を示してしまうと、子どもは手本で示された先生の絵が印象に残ってしまい、真似して先生と同じ絵を描いてしまうのです。中にはタコを見ていないのに、タコを描く子も出てきます。

大人だって例えば「お月様」という言葉を聞いたとき、三日月を思い浮かべる人もいれば、半月、満月を思い浮かべる人もいるでしょう。でも、一つの絵を見せられたら、それしか思い浮かばなくなってしまいます。それと同じなのかもしれませんね。

鳥を描いて叱られた子ども

ある子どもが鳥を描いていました。実はその子は鳥に興味を持っていて、水族館の“熱帯に住む魚”のコーナーで、上に飾られている熱帯雨林に住む鳥の剥製の絵を描いたのでした。でも、「水族館なんだから魚を描かないとダメよ」と叱られていました。

石ころや鳥を描いた時、ダメ出しをしてしまうと、「自由に伸び伸びと書いてはいけないんだ」と感じるようになってしまうかもしれません。

保護者の目が気になる保育士

さて、自由に描かせたひまわり組の担任は壁面に子どもたちの絵を展示しました。すると、黒いグルグルの我が子の絵を見た保護者から、「ひまわり組の先生はたんぽぽ組の先生に比べて、ちゃんと指導してくれない」とクレームを受けてしまいました。

「子どもが感じたことを自由に表現させる」という良い対応をしているのに、先生として親から見て満足な絵でなければ評価が下がることがしばしば起こります。

こうなると、先生は次回から「きちんと魚を魚らしく描かせよう」と考えてしまうのです。

家庭で親が注意したいこと

×ダメ出しする

家庭で子どもが絵を描いているとき、「もっとこれこれこういう風に描きなさい!」とダメ出しをしたり、描き直しさせないようにしましょう。どうしてかというと、自由な表現力や発想力が育たなくなってしまうからです。

子どもの自由な発想を伸ばすためには家庭でも、ママがルールやフォーマット、正解、不正解にとらわれすぎず、その発想を広げられるように上手にサポートしましょう。