チョウ貴裁監督(湘南ベルマーレ)  (C)J.LEAGUE チョウ貴裁監督(湘南ベルマーレ) (C)J.LEAGUE

チョウ貴裁は情熱の人である。

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2012年にヘッドコーチから監督へ昇格した彼は、反町康治前監督が湘南ベルマーレに根づかせたアグレッシブなサッカーを進化させる。就任1年目でクラブをJ1へ押し上げ、1年でJ2降格の憂き目にあっても、すぐにまたJ1へ復帰させた。

90分間足を止めることなく、攻撃的な姿勢を貫き通す。1点取っても2点目を狙いにいく。2点取ったら3点目を奪いにいく。観衆の眼をひきつけて離さないチョウのサッカーは、「湘南スタイル」と呼ばれるようになった。

チョウに鍛え上げられた選手は、ハードワークができて多様性を持つ。予算規模の大きなクラブへ主力を引き抜かれる状況が生まれていったが、一方で「チョウさんのもとで成長したい」という選手は絶えず、若手からベテランまでが湘南の一員となり、キャリアを輝かせていった。

選手を信じ、愛し、ともに戦い、ともに泣き、ともに笑う。J2降格とJ1復帰を繰り返しながらチョウは在任期間を伸ばし、チームは確実な成長を遂げていった。

そうやってつかんだのが、『2018JリーグYBCルヴァンカップ』決勝の舞台である。

1968年創部の藤和不動産サッカー部を前身とする湘南は、奇しくも創立50周年を迎えている。1994年の『天皇杯』以来となる3大タイトルを獲得し、クラブの節目を彩るとの決意を、指揮官も選手たちも胸に強く刻んでいる。

10月20日の『明治安田生命J1リーグ』の試合後、チョウ監督は言葉に力を込めた。

「決勝で相手の良さを消す戦いを選択するというのは、ほとんどないと思っています。思い切って自分たちのスタイルを出して栄冠を取ろうというふうに、お互いがエネルギーを出してくると思いますし、僕の予想では両ゴール前のシーンが非常に多く、それをどっちが決めてどっちが守るか。2点取っても逆転があるかもしれないし、また3対3にして4対3になって、4対4になってPK戦になるかもしれないですし。そういったスペクタクルな展開が容易に予想されます」

激しい撃ち合いを思い描くものの、失点をしていいとは思っていない。カップ戦のファイナルという大舞台に臆することなく、身構えることもなく、チームのポテンシャルを余すところなくぶつけるとの決意表明と考えるべきだろう。

「必ずチャンピオンになって、湘南に帰ってきたいと思っています」

横浜F・マリノスが待ち受ける10月27日(土)の埼玉スタジアム2002で、チョウ監督が率いる湘南はクラブ史のページをめくる。

文:戸塚啓