Eテレ「すくすく子育て」等でママに寄り添うコメントが人気のマメ先生こと玉川大学教授・大豆生田啓友先生。

ご著書『マメ先生が伝える幸せ子育てのコツ』には悩めるママへのメッセージがいっぱい!“幸せ子育て”をしたいママ必読のインタビューです!

マメ先生が伝える幸せ子育てのコツ』に込めた想い

――EテレやNHKラジオ等の子育て相談で、大豆生田先生のコメントにはママのひとりとして、いつもホッとさせてもらっています。

ご著書にはまさに、そのエッセンスが詰まっているように思うのですが、この本に込めた想いをお聞かせいただけますか。

大豆生田先生(以下、マメ先生):私自身、本にも書いたのですが、当初、週末に子どもとよく遊ぶ“イクメン”だと勘違いしていました。

ある日、妻から言われるまで「ママたち一人が頑張っている現実に気付いていなかった」ことに、まったく気が付いていなかったのです。

――いわゆる“なんちゃってイクメン”・・・

マメ先生:一番、タチが悪いかもしれませんね・・・

自分は3児のパパですが、2人目の誕生と同時に、その子がNICU(新生児集中治療室)に入るという危機に向き合ってようやく、自分なりにですが、子育て・家事に積極的に取り組むようになりました。

でも、実際にやってみると、うまくいかないことだらけで。

――マメ先生は、保育の専門家ですよね?

マメ先生:おっしゃるとおり“保育の専門家”であるはずの私が、子どもはかわいいはずなのに、イライラしっぱなし。

「こんなはずじゃなかった」と思わされたのです。

それで、思ったんです。もしかすると、多くのママたちは、私と同じような思いを抱えているのでは?

聞いてみると、まったくもってその通りだった。ママたちが実にワンオペ状態にあり、しかも一人悩みを抱えているケースが、驚くほど多いことに気付かされました。

しかもこの情報社会の中で、みんなが「正しい(とされている)子育て」情報に振り回され、自分はできていないとご自身を責めている方が多いのです。

いやいや。むしろママたちは十分頑張っているのに「正しさ幻想」の中でもがいている方のなんと多いこと!

いまは子育てが難しい時代で、誰がやってもタイヘン。ママたちはむしろ十分頑張っているし、あなたのやり方がとてもステキであることをしっかりとお伝えしたい。

それが、私が本を通じて伝えたかったこと、そしていま子育て支援を続けるなかで伝えたい想いです。

「ノーハディズパーフェクト」ママが完璧にできなかったら子どもはかわいそう?

――本の中では「ノーバディズパーフェクト」(完璧な親も子どももいない、完璧な子育てなんてない)という言葉も紹介されていました。

マメ先生:先ほども申し上げましたが、いまの子育ては「正しさ幻想」にあふれています。

「ほめて、ほめて、育てましょう」「感情的に怒るのはNG」「〇歳までに×××ができるように」「3歳までに子どもの能力は決まる」等々、怪しい内容も含め「子育てはこうあるべき」情報があふれています。

それに従おうとすると、どうしても「自分はほかのママのようにうまくいかない」という気持ちになるのです。

特に、一生懸命子育てに頑張っているママほど、こうした情報に振り回され「なんかうまくいかない」「私のやり方がダメなのかしら」と思いがちで、我が子のためにと「完璧な子育て」を目指そうとします。そこに、苦しさが生じるのです。

――完璧な子育てを目指すところに、苦しさが生じる?

マメ先生:子育ては誰にとっても、専門家の私にとってすら“完璧”になんかいかないものです。

フィンランドのある研究で、ママの機嫌のよさが、子どもの成長にもプラスに影響するというものがあります。

ママが機嫌よくいられるのは、どういう時でしょうか。「自分らしくいられる時」ではないでしょうか。だから「ま、いいか」「子育て以外の私の時間も大事」って思えるくらいの方がむしろよいのです。

毎日、十分頑張っているのですから、一番大事な愛情が子どもに十分伝わっています。

だから子どもにとっても、ママ自身にとっても、ママが「自分らしくいること」、たとえ“完璧”ではなくても「ありのままの自分でいること」が一番よいのではないでしょうか。

「ママが頑張ればうまくいく」ママもパパも周りもそう思っていませんか?

――本で掲載されている、マメ先生が夜泣きをするお子さんに「うるさい!」と怒鳴ったエピソードも印象的です。

そのご体験から「ママが頑張ればうまくいく」は間違い、とも書かれていますが、子育てがうまく進まないのは「ママの頑張りが足りないから」ではないのですか。

マメ先生:これまでも述べてきたように、ママたちは十分に頑張っています。昔の母親は子どもとよく向き合ってきたとおっしゃる方がいますが、そうではありません。

私はその証拠に、いつも漫画『サザエさん』の例をあげます。サザエさんの子は一人っ子タラちゃんです。サザエさんは、タラちゃんに向き合って子育てしてきた人でしょうか?

いいえ、違います。むしろ、よい距離感です。

じゃあ、誰が子育てしてきたか?それは大家族が一般的でしたから、家族みんなが子育てしたのです。

さらにタラちゃんは、いつも近所で遊ぶことができます。そう、かつては“放牧”の育児ができたのです。隣のイササカ先生の家だって出入り自由です。つまり、地域も、自然も、みんなが一緒に子育てしてくれた。

人間の子育ての特徴は「群れ」で行われてきたことでした。

それなのに、いまはママ一人に負担がいく社会。そんな現代で子育てをするママたちが、誰にこの現実を分かってもらい、助けてほしいと言っているかといえば、パパです。パパが、大きな頼りなんです。

でもこのママの大変さは、ちょっとのお手伝い程度では理解できません。私も自分の執筆の仕事と並行して赤ちゃんのお守りをして、「うるさい!」と怒鳴って青くなって初めて、そのいくばくかをやっと理解できました。

ママと“同等”に子育て・家事を担う時に、どれほどママたちが日々頑張っているかが分かるのです。

こうやって考えてみると、かつての私のような“分かったようなイクメン”が一番、タチが悪いかもしれないということを、ご理解いただけるのではないでしょうか。