これをハンバーガーと呼べるのか否か。その存在を聞きつけた世ハ倫では、何度も会議が開かれ、この店のワイルド・アウトをやり玉にあげているらしい。

「ワイルド・アウトには、チャンキー・ジャンキーでも使用する肉と、牛もものひき肉を半々で仕上げた、専用パティを使っています」

と教えてくれたのは、この店の広報担当の酒井優樹さん。

1枚のパティは120グラム。つまり肉の総重量は240グラム。

具材をパティではさんだものをハンバーガーと呼んでいいのかどうかわからない。けれど、このハンバーガーはやみつきになる。上顎と下顎に肉がぶつかる食感が、なんとも嬉しいんだよなあ。

ミディアムレアで焼き上げているせいか、食べているうちに、袋に肉汁がたまる。

この肉汁をどうするか。肉の旨味をふくんだ肉汁を、袋といっしょに捨ててしまってはもったいない。下品かもしれないが、きちんと飲み干してこそ肉好きといえよう。ワイルド・アウトがこの店の一番人気なのも納得できる。

世ハ倫が、腰を抜かす食べ方がある。ワイルド・アウトは、パティを1枚単位で追加(1枚450円)できる。かつて9枚追加した輩がいるそうだ。

LA(ロサンゼルス)の友人によれば、数年前、LAにはやや高額で、個性的なハンバーガーを供するショップが、雨後のたけのこのようにオープンしたという。トリュフを使ったハンバーガーを出す店も登場したと聞く。

でも、肉好きならば、トリュフがのったハンバーガーよりも、パティを好きなだけ追加オーダーできる店のほうがはるかに嬉しい。

とはいえ、9枚も頼むかあ、ふつう。パティが11枚ということは、肉の総重量は1,320グラム。食える、俺?

「さすがにパティ11枚のワイルド・アウトは手でにぎれません(笑)。6枚は皿に別盛りにして、ナイフとフォークで召し上がっていました」

屋号にもあるように、この店はバーガー&バー。つまり、ビールやバーボンウイスキー、ワインを飲みながら、ハンバーガーを味わえるのだ。もちろん、カクテルもOK。酒井さんはバーテンダーでもあるのだ。

せっかくなのでオリジナルカクテル「シェイクツリー」(800円)をオーダーした。やや甘いこのカクテルを飲みながら、ワイルド・アウトを堪能した。

バーテンダーがいるハンバーガーショップが日本にあるのかどうか、私は知らない。

世ハ倫(そんなものがあればだけど)からすれば、親の仇だったりして。でも、うまい肉党からすれば、こんなに喜ばしい店はない。

今度行くときは、パティを何枚追加しようか、財布とにらめっこして決めるとしよう。

【シェイクツリー バーガー&バー】
住所/東京都墨田区亀沢3-13-6岩崎ビル1F
電話/ 03-6658-8771
営業時間/平日11:00〜15:00(LO14:30)、17:00〜21:00(LO20:30)、土曜11:00〜21:00(LO20:30)、日祝日11:00〜17:00(LO16:30)
定休日/月曜(祝日の場合翌日)
※価格はすべて税込

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。