取材時に描いていただいた「直筆もっちー」と田辺さん

「欲しい」と言ってくれるファンの声に背中を押された

――2011年にかっこいい犬を発表してLINEのスタンプ化まで3年空いていますよね?

田辺:2011年の秋に初めて描いた時から、ネットではLINEスタンプにして欲しい、って声がずっとあったんですが、僕は俳優以外の活動はしないと決めていたので、ずっとやらなかったんですね。

それで去年の9月ごろにいつもどおりTwitterでいろんなモノを描いていたら、また盛り上がって、その時にも“かっこいい犬”をLINEスタンプにして欲しいという声が多くて、3年経ってもまだこんなに支持してもらえているなら、もっと素直に期待に応えてもいいんじゃないかなと。それは自分に出来る役割というか、流れじゃないかなと思ったんです。

年齢を重ねると、あの時のこの選択がここに繋がっていたんだ、と後で分かることがある事も多いじゃないですか。自分の考えだけじゃなくて、流れに身を任せてみるのも良いんじゃないかと思いました。

せっかくこれだけゆるく楽しくやってきたことが、商売っぽくなってしまうと冷めてしまうので、僕自身がそういう温度の変化に敏感なので、そうならないスタンスで、小規模で、目の届く範囲だけでやる。“かっこいい犬”の良さは、Twitterという無料のコミュニケーションツールでみんなと楽しみながらゆるく育ってきたことなので、その温度は責任を持って守りたいですね。

メーカーの方もかっこいい犬が好きで、純粋に自分たちが欲しい、使いたいと思う物を作っているので、それは嬉しいですし、それが買ってくれる人にも伝わると思うんです。かっこいい犬のリードを持っていたら、急に犬が走り出して僕も引っ張られている感じです、そのスピードはけっこう心地よいです。

――実際には、難しいところもありますか?

田辺:やはりいろいろ言われるのは仕方ないと思います。副業とか、いろいろ言われますが、自分の中では俳優以外に副業をしたり収益を得るつもりはあまり無かったので。機材代など最低限はまかなえないと趣味になってしまいますが、自分の中ではアップルに戻ってきたときのスティーブ・ジョブズのように、報酬が年1ドルでも良いくらいで、純粋に創作したいんです。

というか、描いていて最高に楽しいし幸せなんです。求められる、自分がそれに応えられるというのは幸せなことなので、11月以降は殆ど寝ずに作業をしていますし、クリエイションは全部自分でやっているので、毎日30通以上の仕事メールのやり取り、月に20回以上の打合せをしたりしています。これは仕事と思ったら大変ですが、好きな事なので楽しいです。

純粋な強い思いでやっているので、何か言われても気にならないですし、今は自分の中の壁をひとつ越えた感じです。喜んでくれる方がいる以上、勇気を持って進められるんです。