ママから始まる新しい動き

前出の竹本有希さんは、2人の男の子のママ。子どもは必ず7時にはごはんを食べさせ、お風呂に入れて早く寝かせるなど、2人の男の子をとにかく一所懸命育てていたそうです。

「あそぼうよ」に通うようになり、子育てサロンを経験するうちに、竹本さんは変わっていきました。

1つは、子どもには子どもの力がある、と思えるようになったこと。もう1つは、一緒に子育てしてくれる人がいる、と思えるようになったこと。

それまでの竹本さんは、はたからみれば、子育てに自信のあるママに見えていたかもしれない、と当時を振り返って竹本さんは言います。

ですが、内心は必死で子育てしていただけだったのだとか。子どもが泣いたらすぐ抱っこ、完全母乳で育てていたため、長男とは断乳するまでの1年2か月、3時間以上離れたことはなかったといいます。

子どもの気持ちに寄り添わなきゃ、社会でやっていけるようないい子に育てなきゃ、そのためには自分ががんばらなくては、と思うあまり、肝心の子ども自身を見ていなかったこともあったそう。

今の竹本さんにとって、子どもは「世話をしてあげる存在」ではなく、「一緒に生きる仲間」だと言います。

子育てサロンの仲間 川島さん

「あそぼうよ」の子育てサロンに感銘を受けた竹本さんは、子育て仲間と一緒に、「あそぼうよ」を運営するNPO法人彩の子ネットワークの力を借りて、2017年8月から新しい子育てサロン「みんなのコッコロ」をスタートさせました。

コッコロとは、イタリア語で「かわいい赤ちゃん」。どの赤ちゃんのこともみんなでかわいがって一緒に育てていこう、そしてみんなの心を大切にしようという二つの想いが込められているそうです。

竹本さんにとって、子育てサロンは、気持ちを受け止め合う場であり、聞いてくれる人がいるからこそ話せる場だといいます。

子育てサロンの仲間 新井さん

そんな場所をまたひとつ、自分たちの手で作りだした竹本さん。きっと、子育てを一人で抱え込んでいるママたちの心をほどく場所になっていくことと思います。

普段、映像の仕事をしている竹本さんは、今年1月、自分たちで子育てサロンをつくった過程を、ドキュメンタリー映像として発表しました。タイトルは『子育てサロンが生まれる日』。

上尾市や近隣の市町村のイベントや大学の授業で上映されているそうです。
可能であれば、上映とセットで一緒に話す場を作ってもらえたら、より広がりが持てるのではないかということでした。

まとめ

筆者の個人的な感想ですが、実際に参加してみて、あまりに普段味わったことのない感覚だったので、正直、どう紹介していいか迷いました。

今回ご紹介した「子育てサロン」が成り立つのに欠かせない要素である3つの約束が、家庭や、自分の属するコミュニティーでも実現できれば、こういった場所は必要ないのかもしれないと思いつつ、理想のコミュニケーションの場をまずは自分たちで作っていくことは、素晴らしいことだし、必要なことだとも思いました。

竹本さんのドキュメンタリー映像「子育てサロンが生まれる日」、気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

今のところ上映予定はないそうですが、上映に関するお問い合わせは「彩の子ネットワーク」までどうぞとのことです。

【取材協力】

竹本有希さん

埼玉在住、二児(5歳と2歳の兄弟)の母。
大学卒業後、テレビ番組制作会社に入社。その後、フリーランスの映像ディレクターとなる。
上尾市つどいの広場「あそぼうよ」の子育てサロンに出会い、子どもの見方が180度変わった体験を、今、子育てが大変なママたちに伝えることができたら、救える命があるのではないだろうかとの想いから、ドキュメンタリー映像「子育てサロンが生まれる日」を制作。

ママがつくる子育てサロン「みんなのコッコロ」を立ち上げる。(子育てサロン「みんなのコッコロ」ブログ