昨年末から今年にかけて、スマートフォン利用者の急増が原因とみられる接続障害やサービスの不具合などのトラブルが相次いで発生した。これらの事故を受けて、総務省は、NTTドコモとauに対して再発防止策を含む対策を早急に講じるよう、行政指導を行った。しかしこうしたネガティブな報道を横目に、スマートフォンの販売台数は、2月も前年を超える水準で推移している。人気ブランド「Xperia」の最新モデルなど、注目の新製品の発売に加え、生活が変わって新規購入・機種変更が増える3月、4月は、再び、空前の売れ行きを記録しそうだ。

●ドコモの全部入りモデル「ARROWS X LTE F-05D」が初の月間1位を獲得

量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリー端末を含む携帯電話全体の1月の販売台数1位は、NTTドコモの富士通製Android搭載スマートフォン「ARROWS X LTE F-05D」だった。2位には0.6ポイントの僅差で前月1位だった「AQUOS PHONE SH-01D」がつけ、3位にはソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」の16GBモデルが入った。

トップ10の顔ぶれは、1位と2位が入れ替わり、auの「iPhone 4S」が順位を上げた以外、前月、2011年12月とほとんど変わらず、「GALAXY S II WiMAX ISW11SC」や「ARROWS μ F-07D」「PRADA phone by LG L-02D」など、1月発売の新機種は、中旬から下旬の発売だったこともあって、いずれも35位以下にとどまった。

初めて月間1位を獲得した「ARROWS X LTE F-05D」は、受信時最大75Mbpsの高速でデータ通信できるドコモのLTEサービス「Xi(クロッシィ)」に対応し、防水・防塵、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信など、従来の携帯電話と同じ機能を備えたいわゆる“全部入り”モデル。昨年秋から登場しはじめたXi対応スマートフォンは、まだ製品数が少ないうえに、国内メーカーならではの定番機能と安心感、1.2GHzのデュアルコアCPU、有効約1310万画素のカメラといった高いスペックが支持されているようだ。週次集計では、昨年の2回に加え、1月第3週(2012年1月16~22日)から直近の2月第1週(2月6~12日)まで4週連続でトップを獲得し、ドコモの冬春モデルのなかではXi非対応の「AQUOS PHONE SH-01D」と人気を二分している。なお、ドコモのスマートフォンのうち、1月はXi対応モデルが32.1%を占めている。

ただ、「BCNランキング」ではキャリア・容量ごとに6機種に分けてカウントしている「iPhone 4S」をキャリアごとに合算すると、ソフトバンクモバイル(SB)の「iPhone 4S」がシェア10.7%でトップに立ち、「ARROWS X LTE F-05D」は、3ポイント差のシェア7.7%で2位となる。以下、「AQUOS PHONE SH-01D」(7.1%)、auの「iPhone 4S」(6.7%)と続く。SB版とau版を合算すると、「iPhone 4S」のシェアは17.3%、スマートフォンに限ると24.3%に達し、発売直後(詳しくは<2011年10月のキャリア別携帯電話ランキング、auとソフトバンクは「iPhone 4S」に人気集中>を参照)に比べると販売台数、シェアともにだいぶ下がったとはいえ、依然として他機種を大きく引き離し、実質No.1のポジションを保っている。

●各キャリアとも前月とほとんど変わらず auは2位と3位以下の差が縮まる

続いて、主要3キャリア、ドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、ここからは、通常、キャリア・容量ごとに別々にカウントしている「iPhone 4S/4」は、キャリアごとに容量を合算し、わかりやすいように1機種としてカウントしている。

ドコモは、1位から4位まで前月とまったく同じ。2011年12月発売のiモード端末「N-03D」が初めてトップ10入りを果たすなど、5位以下には動きがあった。auは、1位から6位までスマートフォンが並び、完全に売れ筋が入れ替わった。このうち、2位の「ARROWS Z ISW11F」と4位の「DIGNO ISW11K」は、下り最大40Mbpsの高速データ通信サービス「WiMAX」に対応している。「iPhone 4S」がau全体の2割以上のシェアを獲得して抜きん出ていることは変わらないが、「ARROWS Z ISW11F」のシェアが前月の約半分に低下し、2位と3位以下の差は縮まった。

ソフトバンクモバイルも、前月と変わらず「iPhone 4S」がシェア56.7%と、ほとんどを占め、併売の前機種「iPhone 4」もシェア6.9%で3位につけている。また、他機種とのセット販売がほとんどだと推測される防犯ブザー付き端末「みまもりケータイ SoftBank 005Z」が2位に、「宇宙空間」をイメージした全7色のAndroid搭載スマートフォン「STAR 7 009Z」が9位に入った。今後の注目は、ガジェット好きから高い評価を得ている2月下旬以降発売予定のAndroid 4.0搭載シャープ製スマートフォン「AQUOS PHONE 104SH」がどれくらい売れるかだろう。

●春商戦でスマートフォンの販売比率は「8割」の壁を超えるか?

昨年12月の月間携帯電話販売台数に占めるスマートフォンの割合は、過去最高の77.0%に達し、新規購入の携帯電話のほぼ8割がスマートフォンだった。今年1月のスマートフォンの販売台数は前月比77.1%にとどまり、スマートフォンの割合は71.3%にやや低下した。とはいえ、「iPhone 4S」が発売された昨年10月より販売台数は多く、季節変動の範囲内といえるだろう。むしろ、矢継ぎ早にスマートフォンの新製品の発表・発売が続き、例年より多く売れた印象がある。

国内の移動電話の出荷台数をまとめている電子情報技術産業協会(JEITA)と情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の発表によると、昨年11月時点で、携帯電話とPHSを合算した移動電話の累計契約数は日本の総人口を初めて超え、人口普及率は100.4%に達したという。普及率100%超えの背景には、仕事用/個人用の使い分けに加え、従来型の携帯電話とスマートフォン、OSやキャリアの異なるスマートフォンなど、さまざまな組み合わせによる「2台持ち」ユーザーの増加があるだろう。冒頭触れた通り、スマートフォン利用者の増加とともに、接続トラブル、通信障害、セキュリティなど、ネガティブな話題や問題が大きく取り上げられるようになってきたものの、いったん進みだした流れはもう止まらない。iPhone(iOS)対Android、いわゆる「グロスマ」対「ガラスマ」、iPhone 4Sのキャリア別対決など、さまざまな観点から、3月、4月の動向が楽しみだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。