パナソニックの4Kカメラ「WX970M」と、4K対応のトランセンドの「SDXCカード UHS-I U3」

今年は春一番が吹かなかったが、子どもの卒業・入学式シーズンがやってきた。可愛い我が子の記念となる一日を残そうと高精細な映像を残すことができる4K対応のデジタルビデオ(4K30p高画質動画撮影に対応しているビデオカメラ)を購入した人もいるだろう。ただ、忘れてはいけないのは記憶媒体だ。4Kカメラを購入したらきちんと対応するSDメモリカードを購入しよう。

フルHD対応のカメラから4K対応カメラに買い替えたなら、SDメモリカードも見直したい。フルHDに比べ約4倍高精細な4K映像は、当然、データ容量が大きく、大容量で高速転送ができるSDメモリカードが必要になる。特に転送速度は最低転送速度が「UHSスピードクラス3(U3)」のものが望ましい。手持ちのカードではスピードが追い付かない場合は、カメラと併せ、SDメモリカードも高速なものに買い替える必要がある。

動画の撮影中は、常に一定量のデータをカメラからSDメモリカードに送り続け、SDメモリカードはデータを書き込み続ける。一般的に、書き込み始めの速度は速い。ところが、ずっと書き込み続けていると速度が徐々に遅くなる。この遅くなった速度を「最低転送速度」といい、遅くなった場合でもこれだけのスピードは安定して出ますよ、と表したのがスピードクラスだ。

スピードクラスには最低2MB/秒の「スピードクラス2(Class2)」、最低4MB/秒の「スピードクラス4(Class4)」、最低6MB/秒の「スピードクラス6(Class6)」、最低10MB/秒の「スピードクラス10(Class10)」の四つがある。どの速度を選んだらいいかは、SDメモリカードを差し込むデジタルビデオカメラの仕様表を確認しよう。ここに対応記録メディアの項目があり、例えば「Class6以上」といった表記がある。

フルHD対応のデジタルビデオカメラはClass4~6以上としていることが多く、余裕を持ってClass10のカードを購入した人が多いだろう。フルHDを撮影するのであればこれで充分なのだが、4Kを撮影するとなると、もっと高速のメモリカードが必要になってくる。

メモリーカード規格を策定する規格団体の「SDアソシエーション」は、4Kを安定して記録できるカードとして、スピードクラスの上位規格で、Class10よりも高速な「UHSスピードクラス3(U3)」(30MB/秒)のカードを推奨している。

とはいえ、この「U3」対応カードはまだ少数派。家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」で2015年2月のデータを見ると、SDメモリカードに占める「U3」対応カードの販売台数構成比は、わずか1.5%にすぎない。数少ない高速のU3対応カードだけに高額なのがその理由だ。そんな市場で、コストパフォーマンスにすぐれたU3対応カード「SDXCカード UHS-I U3」をトランセンドが発売した。

●4K撮影の場合、32GBでは1時間も撮影できない

「SDXCカード UHS-I U3」は、最低30MB/秒の書込みが可能で、フルHD、3D、4K動画でもスムーズに記録できるのが最大の特徴だ。最大転送速度も、理論値読では読み出し95MB/秒、書込みで60MB/秒と高速だ。これだけ速ければ、4K動画撮影でも問題ないし、フルサイズセンサ搭載のデジタルカメラで高速連写撮影をしてもすばやく書き込めるので、快適に撮影を続けることができるだろう。

「SDXCカード UHS-I U3」の魅力は転送速度だけではない。容量が256GBと大きいことも魅力の一つ。4K動画はファイルサイズがとにかく大きくなるため、大容量のメモリカードが必要不可欠。これまでフルHDビデオカメラで使うぶんには問題ない容量でも4KではSDメモリカードではすぐにいっぱいになってしまう。この撮影可能時間について実際に4Kカメラに挿入して確かめた。

今回、検証用の4Kカメラとしてパナソニックの「WX970M」を使った。他社の4KカメラはU3対応のSDメモリカードが必要だが、この「WX970M」はClass10のカードでも4Kを記録できる。

例えば、これまでフルHDカメラ用としてClass10対応の32GBのSDメモリカードを使っていたとする。撮影画質がフルHDの場合、撮影可能時間は4時間以上で、入学式であればこのカード1枚で充分撮影できる。

これを「WX970M」に挿入し、画質を4Kに設定する。すると撮影可能時間はグンと減って58分。1時間を切ってしまった。これでは入学式の途中でカードを入れ替えなくてはならない。また、運動会など、一日をかけて撮影する際は何枚のカードが必要か……と考えるととても面倒だ。

256GBと大容量の「SDXCカード UHS-I U3」を挿入すると、撮影可能時間は8時間。これなら運動会もカードを交換することなく4Kで撮影を続けられる。256GBというとオーバースペックのような感じがするが、4Kカメラにはこれぐらいの容量が当たり前ということになる。

●高速な転送速度でPCに取り込む時間を短縮

最低転送速度、容量だけではなく、最大転送速度もチェックしておくべきスペックだ。最大転送速度は、例えばデジタル一眼レフカメラなどの連写撮影の際や、SDメモリカードのデータをPCに転送する際に威力を発揮する。4K映像となると、くどいようだがデータ量が大きいので、PCに転送するのにも時間がかかる。

一般的な、最大転送速度30MB/秒のカードで、約3GB(3.16GB)のデータをSDカードからPCへコピーしたところ、転送にかかった時間は1分29秒17だった。同じことを最大転送速度95MB/秒の「SDXCカード UHS-I U3」で実施したところ、転送時間は52秒27秒と約30秒も時間を短縮することができた。

わずか30秒の差、と思うかもしれないが、3GBのデータは4K映像で僅か5~6分ほど。1時間の4Kのデータを転送すると考えると、この差はさらに大きくなる。

4K撮影に適したU3に対応し、256GBと大容量で、最大95MB/秒と転送速度の速い「SDXCカード UHS-I U3」の実勢価格は2万円台後半。他社製の同スペックのカードは5万円台半ばなので、コストパフォーマンスの高さも魅力だ。

デジタルビデオカメラだけではなく、デジタルカメラも日々進化している。新しいカメラを購入したら、カメラの性能の足を引っ張らない、見合ったSDメモリカードを一緒に購入したい。(BCN・山下彰子)