作画崩壊なガンダムの名エピソード(1)「時間よ、とまれ」

もはや説明不要の名作アニメ『機動戦士ガンダム』。ファーストガンダムのテレビシリーズに2話だけ、異彩を放つストーリーと、首をかしげる映像が満載の回があります。ファーストガンダムファンにはおなじみの、14話「時間よ、とまれ」と15話「ククルス・ドアンの島」です。 

地球に降りたホワイトベースの目の前でガルマが散って、イセリナが後を追い、アムロが白目むいてランバ・ラルがザクとは違うことを証明し、シャアが「坊やだからさ」とつぶやいて、アムロが母さんに会ったあとの第14話で、それまでスムーズに進んできたストーリーが急に脇道に逸れます。

「時間よ、とまれ」は、ジオン軍のクワラン曹長率いる若手の兵士たちがガンダムをおびき出し、ワッパという搭乗者むき出しの軽量戦闘機でゲリラ戦を挑む話です。地球は、ジオンにとっては言わば最前線。ガンダムを仕留めて手柄を挙げ、宇宙にあるジオン本国、サイド3に帰りたかったのです。

作戦は、ガンダムに爆弾を貼り付けて機銃で狙い撃ち、爆破するというシンプルなもの。ちっこい爆弾なんかでザクマシンガンの直撃を受けても傷つかないガンダムが壊れるのかと思いきや、シールドに付いた爆弾が爆発すると、何とあのバズーカの弾丸すら受け止めるガンダムシールドが粉々に砕けます。

超硬合金ルナチタニウムが粉々になるという、とんでもない破壊力です。

結果的に、アムロが実は時限爆弾だった爆弾を手作業で撤去、事なきを得るという話でした。撤去した爆弾が離れたところで爆発するのですが、完全に核爆発級のキノコ雲が上がっています。この爆弾が一番スゴイです。

インパクトのある作画崩壊も随所にあり、爆弾を外すために座ったガンダムの全高が、本来は18メートルのはずなのに100メートルくらいあったり、足の先が尖っていたりと、よく話題になっています。

ただし、アムロあこがれの女性仕官「マチルダさんの見下ろしポーズ」という、ガンダム界では殿堂入りのシーンも描かれています。「寝るのもパイロットの仕事のうち」なアレです。

当時の子どもたちは何のために作られた話だったのか全然わかりませんでしたが、1話完結のわかりやすいストーリーや憎めないジオン軍兵士たちのキャラとも相まって、今になって高く評価するガンダムファンも多い回です。

作画崩壊なガンダムの名エピソード(2)「ククルス・ドアンの島」

もうひとつの「ククルス・ドアンの島」は、元ジオン軍のパイロットだったククルス・ドアンが、子どもたちを守りながら生きている島でのエピソード。

戦闘中に子どもたちの親を殺してしまったドアンが、自分の罪を償うため子どもたちを連れて逃げたのですが、島を防衛するためにザクを持っていることもあって、それ以降、ジオン軍の追っ手がたびたびやってきていたのです。

ドアンにつかまった連邦軍兵士を助けるために、コア・ファイターでその島にやってきたアムロですが、ドアンが操縦する素手のザクにやられてしまい、島の娘に看病されつつ心優しいドアンの素性を知っていきます。

その後、やってきた追っ手のザクをガンダムでやっつけていいところ見せようとしたアムロですが、逆にドアンのモビルスーツによる見事な格闘戦を見せつけられて終わりました。活躍の場なし。

するとアムロは、ドアンに向かって「あなたの体に染みついている戦いのにおいが原因だ」などと意味不明なことを口走り、あろう事かこれまで子どもたちを守ってきたドアンのザクを、ガンダムで海に投げ飛ばして沈めてしまいます。

それを見て怒る子どもたちにドアンは「あのお兄ちゃんのやったことはとてもいいことなんだよ」となだめていますが、「これ、この先またザクが来たらどうしようもないのでは?」という視聴者の疑問は、今になっても解消されないままです。

この異色のエピソードですが、各シーンの構図はカッコいいのに作画崩壊がひどいです。

モビルスーツの格闘戦が多いこともあって、ねじれる関節、やせたり太ったりするザク、伸び縮みするモビルスーツの腕、偵察機ルッグンにぶら下がるザクなど、絵的にも設定的にも崩壊レベルは相当高いです。にもかかわらず、今でも名作として評価が高い話になっています。

ちなみに当時の子供たちは、何のための話だったのだろうと不思議に思いながらも、劇場版ではスッパリとカットされたことに何となく納得したものでした。

……さて、若干アツく語り過ぎた感はありましたが、いかがだったでしょうか?

子供のころに見ていたアニメを見返してみると、当時は気付けなかったツッコミどころや伏線が見えてくるものです。

もしかすると、子供心に違和感を覚えたあのエピソードにも知られざる裏事情が隠されているかもしれません。

みなさんも、制作背景に思いを巡らせながら懐かしのアニメを鑑賞してみてはいかがでしょうか。

株式会社エディトル所属。IT系雑誌やムックの編集業のほか、コミック、文芸、お笑い、ライフハックなど多分野の記事を執筆。絵が描けないくせにイラストのディレクションに手を出し始めた今日この頃、この仕事はなんでもありなんじゃないかと思い始めている。