ゲオのモバイル運営部・森田 広史・ゼネラルマネージャー

NTTコミュニケーションズとゲオは4月2日、「ゲオ×OCN SIM」を同日発売するなどで業務提携を行うと発表した。これまでもゲオは店頭でNTTコミュニケーションズ「OCN モバイル ONE」のSIMを販売してきたが、さらに連携を強化。両社の強みを生かしながら、音声通話SIMの「即日渡し」を行うなどで新品・中古のSIMフリースマートフォンとSIMカードの販売を拡大していく狙い。

●徐々に高まる音声SIMのニーズ

今回の提携を機に「中古と新品を合わせた2015年度のスマートフォンの販売台数目標は100万台」と語るのは、ゲオのモバイル運営部・森田 広史・ゼネラルマネージャー。全国1000店の直営店ネットワークと国内最大級の中古端末の販売実績を武器に、早期の達成を目指す。森田ゼネラルマネージャーは「販売ターゲットが若年層や主婦・ファミリー層に移行しつつあり、データ通信に加え、通話もできる『音声SIM』へのニーズが高まっている」とも語る。ここでは特に「SIMの即日渡し」の要望が強いという。

「音声SIM」は、発行までに本人確認やSIMへの書き込み作業などがあるため、申し込んでも受け渡しまで3~4日程度かかるのが一般的だ。その際、MNP(Mobile Number Portability=ナンバーボータビリティー)を使って、電話番号をそのままで契約しようとすると、SIMが届くまでの数日間は結果的に電話が使えない状態が発生してしまう。これはとても不便だ。しかし、SIMの受け渡しが当日にできると、大きなアドバンテージになる。実際「ゲオ秋葉店で行った2月のトライアル販売では、即日渡しの結果、326枚の音声通話SIMが販売できた」(森田ゼネラルマネージャー)と手応えを語る。

さらにゲオでは、2機種の新品スマートフォンを発売する。ラインアップと税込価格は、freetelの「priori2」が1万584円、ファーウェイの「G620S」が2万3544円。割賦販売に関しては、これら新品のスマートフォンだけでなく、以前から販売している中古のスマートフォンにも適用。また新品・中古とも保証サービスを行う計画だ。

●ダブルネームでのSIM店頭販売は今回が初

一方、「OCN モバイル ONE」を運営するNTTコミュニケーションズでは、販売店の店頭で「ゲオ×OCN SIM」といったダブルネームのSIMを販売するのは今回が初めて。最初の提携先としてゲオを選んだわけだ。その理由として大井 貴・取締役 ネットワークサービス部長は「2000万人の会員がいて、すでに本人確認ができている点が魅力」と語る。ゲオの会員情報を活用しながら音声SIMを販売することで、面倒な本人確認の手間が減り、他社ではできない「即日渡し」が可能になる。

「OCN モバイル ONE」は老舗のインターネットプロバイダーOCNのブランドだけあって知名度が高く、同社によると「独自サービス型SIM市場でトップシェア」(大井取締役)だという。しかし、同社が販売してきたのは通話のできない「データSIM」。「音声通話対応SIM」の取り扱いは昨年12月に始めたばかりだ。そこで「即日渡し」のほかにも、他社では1年の「最短利用期間」を6か月とするなど、音声SIMの拡販に重点を置いている。また同社では「ゲオが販売するスマートフォンの約2割に相当する数のSIMが販売されるものと期待している」(大井取締役)として、初年度約20万枚のSIM販売を見込んでいる。

●拡大著しいSIMフリー市場、サービス合戦は音声SIMにも波及か

家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」では、昨今のスマートフォン市場は、SIMロックの有無で伸び率の濃淡が激しい。例えばこの3月、SIMロックされたスマートフォンの販売台数前年比は80.3%と、ほぼ2割前年を下回っている一方、SIMフリーのスマートフォンは273.3%と3倍近い伸びを示しているからだ。そんななか、SIMカードを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator=仮想移動体サービス事業者)は増加の一途をたどり、競争が激化してきた。この3月には、多くのMVNO事業者が、高速通信ができる月間容量を軒並み拡大させるなど、実質的な値下げ合戦が過熱している。

5月に控えたSIMロック解除の義務化。これが始まれば、ますますSIMフリースマートフォンが一般的になり、さらに通話SIMのニーズも高まるものと予想される。現在主流の高速データ通信容量を競うサービス合戦から、音声通話の価格やサービスがクローズアップされる可能性も高い。今回の提携は、そうした環境でも戦える体制整備ともいえるだろう。(BCN・道越一郎)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。