中谷美紀  撮影:舞山秀一 ヘア&メイク:カワムラノゾミ スタイリスト:岡部美穂 中谷美紀  撮影:舞山秀一 ヘア&メイク:カワムラノゾミ スタイリスト:岡部美穂

16世紀のスコットランド女王メアリー・ステュアートと、イングランド女王エリザベス1世。ふたりの女王の激動の生を描いた舞台『メアリー・ステュアート』(ダーチャ・マライーニ作)が10年ぶりに東京・PARCO劇場に登場する。かつて麻実れい×白石加代子(1990年)、南果歩×原田美枝子(2005年)の競演で話題を呼んだ、女優ふたり芝居。今回のタイトルロール、メアリー・ステュアート役を演じるのは、3作目の舞台出演となる中谷美紀だ。ひとり芝居の『猟銃』(2011年)で初舞台とは思えぬ圧巻の存在感を放ち、続く家族劇の『ロスト・イン・ヨンカーズ』(2013年)では読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。さらなる高みを目指し、本作に挑むこととなった。

舞台『メアリー・ステュアート』チケット情報

「ふたり芝居という点で躊躇したところはありました。ひとり芝居の場合は自分でペースをコントロールできますし、また群像芝居の場合は、自分がすべてのエネルギーを使わなくても相手のリズムに委ねられる部分が大きいんですね。でもふたり芝居では寸分の隙も見せられないな…と思っています」

同時代に同じ島の中で生きたふたりの女王は、史実においては出会うことがなかったという。だがこの戯曲では、相反する個性を持ったふたりが夢の中で激突する。

「エリザベスは大変理性的で、自らを律することができる人間。一方、メアリーはその場の感情で動いてしまうような、少し浅はかな部分もある女性です。そんなふたりの対比は、とくに女性の観客の方々にとっては働く女性の在り方や、どのように生きていくのかといったことを考えていただくきっかけになるのではないかなと思いますね」

エリザベス1世に扮するのは、多くの舞台で華々しい活躍をみせる実力派、神野三鈴だ。それぞれが女王役を演じるほかに、中谷はエリザベスの侍女に、神野はメアリーの乳母に扮して相手役と対峙する点もこの戯曲の妙味である。

「神野さんは圧倒的な存在感と、深みのある、いかようにも変化する声をお持ちの方です。多くを学ばせていただければと思っています。戯曲の上ではメアリーとエリザベスの侍女、二役が頻繁に切り替わるので、それもかなり難しい課題でしょう」

気鋭のイギリス人演出家マックス・ウェブスターによる新演出にも注目だ。作品ごとに舞台女優の貫禄を増幅させていると感じる中谷だが、当人は「新たな作品や演出家と出会うことで、これまでの価値観はすべて壊さなければならない。ゼロからのスタートです」ときっぱり。潔く、涼やかな視線で臨む、濃厚な女優対決に期待したい。

「女性が社会の中で生きていくのは容易ではないでしょう。身の振り方に迷いを感じている女性はたくさんいらっしゃると思います。ふたりの女王の姿が、ご自身の人生についてあらためて考えていただくきっかけになれば嬉しいです」

東京公演は6月13日(土)から7月5日(日)まで。その後、大阪、広島、愛知、福岡でも公演。チケットの一般発売は4月4日(土)午前10時より。

取材・文:上野紀子