稲村米治(昆虫千手観音像)  画像提供:鞆の津ミュージアム

美術展「スピリチュアルからこんにちは」
04.30[木]~07.20[月] / 広島県 / 鞆の津ミュージアム

独自にかたちづくられる精神的世界から生み出された、様々な創作物を集めた展覧会。一目見ただけで、ただならぬオーラを感じる作品が集まっている。

2012年5月にオープンした鞆の津(とものつ) ミュージアムは、アール・ブリュット専門美術館だ。『アール・ブリュット』とは、日本語で「加工されていない生(き)の芸術」 という意味で、超個人的発想から生まれた不思議な表現の芸術のこと。例えば、障害のある人や専門の教育を受けていない人たちによる芸術もその一つである。

鞆の津ミュージアムではこれまでに、「極限芸術~死刑囚の表現~」、「ヤンキー人類学」、「花咲くジイさん~我が道を行く超経験者たち~ 」など、斬新なテーマの展覧会を行ってきた。これまで表現として捉えられなかった作品や事物を取り上げることをテーマとしており、アート作品と言うより、それを作った“人”に焦点を当てている。

数々の“ヤバイ”(これまでになかった、独創的な、一風変わった、という意味で)企画を行ってきた鞆の津ミュージアム・キュレーターの櫛野展正(くしの のぶまさ)さんにお話を聞いた。

 

櫛野展正さん

―今回の展覧会を開催した経緯を教えてください。

櫛野さん:以前の企画もそうなんですが、社会問題をテーマにやっていこうという思いがありました。また、スピリチュアルというテーマも誰もが意識はしているけれど、今まで見て見ぬふりをしてきたもの、ということで今回取り上げました。

この美術館は、知的障害者のための施設が運営しています。例えば精神障害の方などで、虚言というか見えないはずのものが見えたという人がいます。スピリチュアルも同様で一概に否定できないと思っていたんです。彼ら彼女らのほうが正しいかもしれない。ただ、科学的な知識や観点からは間違いじゃないか、幻覚ではないかと言われてしまいますけれど、もしかしたら見えているかもしれない。

それに対して、宗教とかそういったものは結構信じられていますよね。ただ、今回取り上げた個人的なレベルで信じているものや、自分で創造物を作っている人たちに対しては、変わった人とかそういう風に思われがちです。彼らは少数派で信じてもらってないところもあるので、そうしたものを同じテーマの中で展示してみようということです。

―タイトルも「スピリチュアルからこんにちは」 というユニークでポップな印象があるものですが、ここにはどんな思いが込められているのでしょうか?

櫛野さん:昔、三波春夫さんが「世界の国からこんにちは」って唄ってましたよね。基本的には多様性や、色んな人間が集っているイメージです。

あとはスピリチュアルな人たちは何者かと交信している、というイメージも僕の中にあって「スピリチュアルからこんにちは」、というのは僕らが挨拶しているんじゃなくて、向こうから何かが顔をのぞかせているような、そういうベクトルから付けました。