SIMフリースマートフォンの売り上げが伸びている。通信規格さえ合えば、どんなキャリアのSIMを入れても通話や通信ができるとあって人気が高まっているからだ。スマートフォン全体が伸び悩んでいるのを尻目に、毎月の販売台数は前年比で2倍以上の水準を維持しており、スマートフォンに占めるSIMフリーモデルの割合も1割弱まで広がってきた。MVNO(Mobile Virtual Network Operator=仮想移動体サービス事業者)が増加し、格安SIMの選択肢が広がるとともに、スマートフォン市場は大きく変化しつつある。そこで、SIMフリースマートフォン市場の現状と、実売ランキング上位のメーカーや端末をチェックした。

●伸びが止まったスマートフォン、SIMフリーモデルだけは急速に伸びている

家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」で2014年3月から2015年3月までのスマートフォン市場を振り返ると、毎月の販売台数が前年を上回ったのは7か月間だけ。残り6か月は販売台数が前年を下回った。普及が一巡し、買い換え需要頼りの市場になってきたことが頭打ちの要因だ。さらに、通信料が高止まりしており、フィーチャーフォンに比べ割高な料金体系も、伸び悩みの一因といえる。

一方、破竹の勢いで伸びているのがSIMフリーのスマートフォンだ。毎月の販売台数前年比は14年7月以降2倍以上で推移している。14年4月にイオンが「格安スマホ」に参入して以来、一般のユーザーにも認知が広がり、MVNOの増加もあって、存在感がどんどん大きくなっている。さらに14年11月、コンシューマー向けPCで世界3位のASUSの日本法人が「ZenFone 5」を日本市場に投入すると、市場の勢いが加速。年末商戦の12月には、スマートフォン全体に占めるSIMフリーモデルの割合が9.8%とほぼ1割の水準まで達した。14年3月時点では、わずか2.4%だったことから考えると成長のスピードは速い。

●上位3社が20%台のシェアを奪い合う状況に

14年3月の販売台数を1とする販売台数指数でも、SIMフリースマートフォンは順調に販売台数を増やしており、15年3月時点では実に2.7倍と、市場規模は3倍近くまで膨らんだ。一方で、端末メーカー間でのシェア争いは徐々に激しくなってきている。14年3月時点では、Nexus 5のLGが7割を超えるシェアを獲得し一人勝ち状態だったが、徐々に競合端末が増え、14年11月にASUSが日本市場に本格参入すると、一気に首位の座を獲得し、5か月連続でトップを走り続けている。とはいえ、ここに来てメーカーシェアの差は徐々に縮まってきて、3月時点では1位のASUSは24.9%だが、2位のLGは22.5%と僅差。3位のファーウェイも21.0%と3社が2割台のシェアで争っている状況だ。

端末別の実売ランキングを見ると、やはりASUSの「ZenFone 5」が24.9%とトップ。2位がLGの「Nexus 5」で19.5%、3位がコヴィアの「FLEAZ F4s」で6.9%といった順だ。「ZenFone 5」は5インチのHDディスプレイにクアッドコアCPUを搭載しメインメモリも2GBとまずまずのハイスペックといえる。日本語入力システムにジャストシステムのATOKを標準搭載するのもウリの一つ。さらに、16GBモデルで税込3万円を切る価格も大きな魅力だ。

一方、2位の「Nexus 5」は、LG製のGoogleブランドのハイスペックスマートフォンとして根強い人気がある。2.26GHzのCPUは高速で、5インチディスプレイはフルHDだ。現在の日本市場では、この2機種が2強ということができるだろう。

●トップシェアのASUS、4月20日に渾身のハイスペックモデル投入か

スペックで「Nexus 5」にやや見劣りするものの、リーズナブルな価格でトップシェアを走っている「ZenFone 5」だが、近く後継モデルの「ZenFone 2」が日本市場に投入されるとの噂がある。「Experience 2morrow」というタイトルで、ASUSがティザーサイトをオープンしたからだ。なにやらスマートフォンらしいシルエットとともに「拝啓、日本の皆様 お待たせしました。」の文字も。「2015.04.20」との表記があることから、どうやら4月20日に何らかの発表があるようだ。この内容から見て、おそらく「ZenFone 2」の発表で間違いないだろう。

「ZenFone 2」は、海外ではすでに販売されており、4GBと世界初の大容量メモリを搭載し、インテルの2.33GHzクアッドコアCPUを搭載し、5.5インチのディスプレイもフルHDになるなど、一気にハイスペックに振ったモデルだ。トップシェアのASUSが渾身のハイスペックモデルを投入することで、SIMフリースマートフォン市場はさらに活気づきそうだ。(BCN・道越一郎)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからPC本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(PCの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

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