ASUS「ZenFone 5(32GBモデル)」(税込実勢価格3万円台前半)

ほんの数年前には、家電量販店でほとんど姿を見ることのなかったSIMフリースマートフォン。近ごろではドコモ、au、ソフトバンクなどの3キャリアコーナーに隣接した形で、陳列スペースが設けられるようになった。しかし、家電量販店説明員からは、ぶっちゃけた商品説明はなかなか受けられない、というのが筆者の正直な印象だ。というわけで今回は、2015年4月時点における、買って後悔しないSIMフリースマートフォンを「ぶっちゃけて」ご紹介したい。

●SIMフリースマートフォン オススメ5製品

今回は、数あるSIMフリースマートフォンから、オススメ機種としてASUSの「ZenFone 5(32GBモデル)」、ファーウェイの「Ascend Mate7」、富士通の「ARROWS M01」、LGエレクトロニクスの「LG G3 Beat」、京セラの「KC-01」の5製品を選んだ。

すでに家電量販店やウェブサイトなどで情報収集している方は、私が選んだ5製品は高価だと感じるかもしれない。たしかに最近では1万円ちょっとで入手可能なSIMフリースマートフォンが存在する。しかし低価格なSIMフリースマートフォンはスペックを割り切ることでその価格を実現しているのだ。

●やはりLTE対応がいい

低価格なSIMフリースマートフォンは、1世代前の「3G」にのみ対応しており、現在主流の高速回線「LTE」には対応していない。実際の通信速度としては、3G専用SIMフリースマートフォンよりLTE対応SIMフリースマートフォンのほうが2~6倍速い。メールの送受信、ウェブサイトの閲覧、LINEなどコミュニケーションアプリを利用するだけなら3Gで安いSIMフリースマートフォンでも使用に耐えるが、動画を見たり、地図アプリなどを快適に利用したりしたいのであれば「LTE対応」のSIMフリースマートフォンを選んだほうがよい。

●メモリ容量は1.5GB以上は欲しい

メモリの容量は、いわば「作業場」。容量が大きければ作業場が広く、べつの作業に移る際にも作業場を片付ける必要はなく、また元の作業に戻る際も準備しなくてもすぐに再開できる。これをスマートフォンに当てはめると、アプリからアプリに切り替える際のスピードが速くなる。低価格スマートフォンのなかには、メモリ容量が512MBの製品もあるが、最低でもその倍にあたる1GB、できれば「1.5GB以上」搭載した端末を選びたい。

なお同じ「GB」という単位を使うスペックに、ストレージの容量がある。こちらは写真や音楽などのデータを記録するためのものなので、混同しないように注意してほしい。

●タッチパネルは5点タッチ以上

約1万円の低価格SIMフリースマートフォンのなかには、2点タッチまでしか認識できないタッチパネルを使うことでコストダウンを図っているものがある。通常のアプリでは2点タッチで支障はないが、ゲームなどでは2点タッチではプレイできない、または著しく操作性が落ちるタイトルがリリースされる可能性がある。ゲームも主要目的のひとつであれば、「5点タッチ以上のタッチパネル」を搭載したスマートフォンを選んだほうがよい。

●カメラの画素数も要チェック

カメラの画質は「800万画素(または8Mピクセル)」といった形で記載されており、一般的には画素数が多ければ多いほど解像度の高い写真を撮影することができる。しかし同じ解像度であっても、レンズの明るさ、センサーの感度、そしてカメラソフトウェアの最終的な調整によって、実際に撮影できる写真の画質は大きく変わってくる。画質には好みもあるので最終的には店頭で試していただきたいが、今回の記事でオススメ5製品に選んだのは比較的見た目に忠実な写真を撮影できるモデルだ。

●ディスプレイの画質は実際に見て確認

ディスプレイには、TN(Twisted Nematic)液晶、VA(Virtical Alignment)液晶、IPS(In-Place-Switching)液晶などがあり、最近販売されているスマートフォンのほとんどは、このなかでもっとも高画質とされるIPS液晶ディスプレイを採用している。しかしIPS液晶ディスプレイのなかでもさらに優劣があり、それはスペック表では判断つかないのでややこしい。今回の記事でオススメ5製品に選んだのはどれもディスプレイ画質がよいモデルだが、購入前に自分の目で確認してほしい。

●オススメSIMフリースマートフォン、それぞれの特長

オススメ5製品の主なスペックを以下の表にまとめた。

これまで説明してこなかったのは「OS」と「CPU」という項目が登場している。OSについてはすべて『Android 4.4』で横並びだ。すでに『Android 5.1』がリリースされており、数字が大きいほど高機能な新しいバージョンだが、その一方で不具合なども多数報告されている。不具合がほとんど修正されて安定して動作するAndroid 4.4は、いま日常使いするスマートフォン用OSとしてはよい選択肢と言える。

CPUについては、コアが多いということは脳みそが多い、そして1.2GHzよりも1.8GHzと周波数が高いほど頭の回転が速いと理解していただければ間違いない。ということで、今回のモデルのなかではAscend Mate7が頭ひとつ飛び抜けた存在だということがわかる。そのぶん価格も飛び抜けているわけだが……。

さて最後にそれぞれの寸評で締める前に、大事なポイントをお伝えする。実はSIMフリースマートフォンなどで使えるMVNO SIMカードには、ドコモ系とau系の2種類があるのだ。

まず、ドコモ系MVNO SIMカード対応SIMフリースマートフォンは、「ZenFone 5」、「Ascend Mate7」、「ARROWS M01」。一方、au系MVNO SIMカード対応SIMフリースマートフォンは、「LG G3 Beat」、「KC-01」。端末から選ぶのであればすべてのSIMフリースマートフォンが購入検討対象となるが、使用するMVNO SIMカードが決まっているのであれば検討対象は絞られる。この点を踏まえて、初めてのSIMフリースマートフォンを選んでほしい。

・ZenFone 5 スペックは必要にして十二分。そつがないスタンダードな端末だ。広く世界で売られているのでアクセサリーも豊富に用意されており、日本のアクセサリーメーカーも専用ケースを販売しているほど。迷ったらこれを買えば間違いない。

・Ascend Mate7 今回紹介した端末のなかでもっともハイスペックなモデル。ディスプレイも6インチとほかよりも一回り大きい。背面の指紋認証センサーでワンタッチでロックを解除できる。3キャリアのフラッグシップモデルと遜色ないハイエンド機だ。

・ARROWS M01 防水・防塵対応のコンパクトモデル。フィーチャーフォンに似たホーム画面や、通話相手の声を聞きやすくする「スーパーはっきりボイス4」などを搭載し、初めてのスマートフォン向きの端末に仕上げられている。私が両親に勧めるならこの端末を選ぶ。

・LG G3 Beat LGエレクトロニクスのフラッグシップモデル「LG G3」のコンパクトモデルとして位置づけられている。撮影物に向けるとすぐにピントをあわせる「レーザーオートフォーカス」などカメラ機能が充実している。同社のカメラ画質には定評があるのでカメラ機能を重視するなら、本端末がオススメ。

・KC-01 防水・防塵対応のコンパクトモデルであり、商品コンセプトは「ARROWS M01」に近い。小型ながら背面をラウンドさせるなど高級感ある仕上がりだ。メモリを1.5GB積んでいるなど真面目な作りも好印象だ。

●SIMフリースマートフォンとはいえ、購入費用はケチらないほうがいい

先述のとおり、今回選んだ5モデルを少し高いと思うかもしれない。しかく安いSIMフリースマートフォンには安いなりの理由があり、長く使っていると写真が汚い、通信速度が遅い、ディスプレイが見にくいなど、小さな不満に悩まされることになる。格安のMVNO SIMカードで月々の通信料を節約するとしても、実際に手で触れ、見ることになるSIMフリースマートフォンの購入費用はあまりケチらないほうがよい。MVNO SIMカードはすぐに乗り換えられても、新たなSIMフリースマートフォンを購入するには大きな出費が必要になるのだから。

なお4月20日にASUSが新製品発表会を予定しており、メモリを4GB搭載した『ZenFone 2』が発表されると予想されている。ハイスペックモデルがほしい方は、この発表会を待ってから購入する端末を選んだほうがよいだろう。(ジャイアン鈴木)