家では元気なのに、外に出るととたんにもじもじして挨拶ができなかったり、なかなか友達の輪に入れなかったりする子どもに、不安を覚えたことのあるママは多いのではないでしょうか。

先輩ママは、「大丈夫だよ、うちの子もそうだったし、最初だけだよ」と言うでしょう。実際、時間が解決し、集団生活や集団行動になじんでいける子どもも多くいます。

ですが、どんなに時間がたっても、自分が本当に安心して安全と感じられない場所ではママから離れられない子どもは、もしかしたらHSCかもしれません。

HSCとは、Highly Sensitive Child のことで、日本語では「人一倍敏感な子」と訳されます。HSCとはなにか、子どもに合った子育てとはどんなものなのでしょうか。

この記事では、自らHSCの親であり、HSCをより多くの人に知ってもらうための活動をしているkoko kakuさんにお話を伺いました。

息子さんの「たけるくん」は、現在9歳。学校には行かず、ホームスクーリングを選択して生活しているそうです。

HSCとは?

HSCとは、人一倍敏感で、繊細さや感性の豊かさ鋭さを持つ子どものことです。こういった気質は生来のもの。病気や障がいではありませんが、発達障害と誤解されることも多いのだそうです。

HSCが知られるきっかけとなった『ひといちばい敏感な子』の著者エレイン・N・アーロンさんによると、ほぼ5人に1人はHSCにあたるといいます。

HSCは病気ではないため、病院などでの診断はできません。『ひといちばい敏感な子』には、子どもがHSCかどうかを判断するためのチェックリストが載っています。

全23項目のうち、13個以上の項目に当てはまるようなら、HSCである可能性があるのだそうです。ただし、当てはまる項目が1つか2つでも、その度合いが極端に強ければ、その限りではないそうです。

中でもHSCに共通する4つの性質があります。

  1. ささいな刺激や変化を敏感に感知する
  2. 刺激に圧倒されやすく、疲れやすい
  3. 状況をじっくりと観察し、情報を深く処理してから行動する
  4. 他人の気持ちに敏感で共感力が高い

HSCに関する書籍は日本ではまだ3冊しか刊行されていません。

koko kakuさんは、すでに『敏感な子の守りかた絵本』という冊子を出版していますが、よりHSCを知ってもらうために、「子どもが学校に行きたくないと言った時の判断・選択・安心の材料」となる本の制作・出版を目指しているそうです。

敏感さや繊細さは誰にも当てはまること

koko kakuさん

koko kakuさんは次のように言われています。

「HSCかどうかの判断は難しいケースもありますし、レッテル貼りと感じられて嫌がる人もいるかもしれませんが、私は、子どもを枠に当てはめたいわけではなく、HSCという名前が広まってほしいと考えています。

なぜなら、HSCの感じ方、たとえば人から触れられるのが嫌だったりとか、そういう感覚は、わからない人にはわからないんですよね。そのために心ないひとことを言われてしまうかもしれない、それを避けたいと思っています。

私は程度の差こそあれ、ある程度の敏感さや繊細さは、日本人の場合かなりの割合の人が持っているのではないかと思うんです。そういったことを配慮するきっかけになればいいなとも思っています」

ちなみに大人の場合は、HSP(Highly Sensitive Person、人一倍敏感な人)といって、こちらはすでに何冊かの本が出版されており、HSCよりも世の認知度は高いようです。

大人になって自分の繊細さに気づいた人たちは、もしかしたら、そういった部分を抑えたり、周りに適応したりして大人になり、ある意味、鈍くなることで生き延びてきたのかもしれません。

しかし、自分の感覚をどうしてもごまかせない子どももいます。

もしも、自分の子どもがHSCである、もしくはその可能性があるとしたら、それはその子の個性であり、そのことを受け入れることが親としてできる、最初のことなのではないでしょうか。

HSCへの理解はまだ途上

ひといちばい敏感な子』が出版されてまだ数年しか経っておらず、しかもHSCは病気や障がいではないため、医療や保育に関わる人でも知っている人はまだ限られているそうです。

HSCの子どもは安心・安全と感じられないことにはなかなかなじめないため、親の特別の配慮が必要になります。そのため、時には、周囲から理解が得られず、親が甘やかしていると言われてしまうことも。親が社会と我が子の板挟みになって、苦しむこともあるでしょう。

ですが、その子にしてみたら、何がいちばん幸せなのでしょうか。乳幼児期にその子のありのままを受け入れてもらえなければ、健全な自己肯定感を育むことは難しくなるでしょう。自己肯定感の低さはそのまま生きづらさに直結します。