いっぽう冒頭でご紹介したような「非第一世界文具」は製品の作りや色彩の素朴さ、印刷された現地の文字の珍しさ等が注目されてのものです。またはこれらの国の衣類や雑貨とのコーディネイトが目的の場合もあります。実際に使ってみると、紙の質がいまひとつだったり、製本や罫線の印刷がいい加減なものも少なくはなく、「日本における普通の文房具」とは少々隔たりを感じる時もあります。


タイのノート。寸法比率や色彩は個性的だけど製本の出来は…。

しかしその「足りない感じ」・「不思議な感じ」が、カッコ良さを追求しすぎた現代の文房具に比してニッチな魅力になっていて、この手の製品を求める人達の心を癒しているのかもしれません。
そのような中、「第一世界の当たり前」から離れているがゆえ(?)に私が気に入っている製品をひとつご紹介しましょう。


「メキシコの14mm方眼ノート」

南米・メキシコの方眼ノートです。なんと14mmという特大の方眼罫。ちょっと濃いめのブルーの罫線がイイ感じ。ノートの作りも紙質も罫線印刷もざっくりしたものですが、大きな方眼に鉛筆系の筆記具でゴソゴソと大きな文字を書き込む感触は良い気分転換に。まだ使い切っていなくても、お店で見かけるとつい補充してしまう不思議な製品です。


14mm方眼ノートの紙面。

日本ではなぜか5mm方眼ばかりが人気で、大きめの方眼罫線の品数は少なめです。私はだいぶ以前から10mm方眼を推奨しています。これが14mmとなると、ひとつ「突き抜けた」ものを感じます。

さて、「非第一世界」の文房具まで入手できる日本は行き過ぎなのでしょうか。その声ごもっともですが、これらの製品を現地で少しずつ買い付け(多く場合、ハンドキャリーなので大量には持ってこられない。また紙製品は儲けが少ないのにサイズや重量ばかりかさむ)、日本に持ってきて紹介してくださるバイヤーさん達の手間や苦労や心意気を感じながら大切に使うというのも、ひとつの楽しみなのでは?と思うのであります。

(今回ご紹介した製品の多くは東京・湯島のロシア・ブラジル・アジア雑貨のお店「nico(ニコ)」さんに時々あります。) 

わだ・てつや 東京小猫商会:文具部1号、コモノ部3号。文房具サイト「ステーショナリープログラム」主宰、ウェブショップ「信頼文具舗」店長。著書「文房具を楽しく使う」シリーズ(早川書房刊)ではノートや筆記具を趣味として楽しむための基礎的な知識を提供。近年の文房具人気を支えるリソースのひとつとなっている。その他、商品開発・ブランディング等のコンサルティング、講演、イベントプロデュースなどを行っている。 ブログ公式HP