アラン・ギルバート (C)Rikimaru Hotta アラン・ギルバート (C)Rikimaru Hotta

この12月に再び都響に帰ってくる首席客演指揮者アラン・ギルバート。定期Bシリーズと都響スペシャルでのシューマン、ストラヴィンスキーの「春」プロに続いて、定期CシリーズとAシリーズでは、カラフルで情熱的なスペイン・プログラムを楽しませてくれる。

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近年、オペラ指揮者としても世界中で活躍し、今年の5月にスウェーデン王立歌劇場でR.シュトラウスの『ばらの騎士』を、2019年5月から6月にかけて、ミラノ・スカラ座でコルンゴルトの『死の都』を振るなど、歌劇のレパートリーを広げているギルバート。都響と新たな境地を創り上げる意欲が感じられるドラマティックな曲をセレクトした。R.シュトラウス:交響詩『ドン・キホーテ』とリムスキー=コルサコフの『スペイン奇想曲』では、都響のメンバーがソリストとしてフィーチャーされるのも聴きどころ。『ドン・キホーテ』ではソロ首席ヴィオラ奏者 鈴木学が、ゲストのチェリスト ターニャ・テツラフとソロ・パートを演奏し、『スペイン奇想曲』ではヴァイオリン、クラリネット等で都響の首席奏者たちのソロを聴くことができる。『ドン・キホーテ』も『スペイン奇想曲』も指揮者とオケの呼吸感がものをいうエネルギッシュな楽曲。その瞬間に降りてくるひらめきをキャッチした、エキサイティングな掛け合いを聴かせてくれるはず。

ビゼーの『カルメン組曲』はアラン・ギルバート・セレクションで、「音楽で物語を語りたい」という彼のこだわりが強く表れている。オペラの王道の中の王道ともいえる『カルメン』を歌なしでオケに歌わせる自信があるのだろう。都響も、頻繁ではないが東京二期会のピットや東京・春・音楽祭でオペラの成功を支えてきた功績がある。ギルバートが求めるオペラ的な次元に、冴えたレスポンスをしてくれるのが楽しみでならない。同じスペインを主題にしていながら、異なる国の作曲家を三人並べる自由さも「無限」が似合うギルバートらしい。ボーダーレスで冒険的なプログラムには、ユーモアも感じられる。若くしてニューヨーク・フィルの音楽監督に抜擢され、50代を迎えて指揮者としての本格的な円熟期に入ったアラン・ギルバート。つねに新しい何かを待っている都響とギルバートの出会いは必然だった。両者にとっての未知の次元を切り拓く、華やかなスパニッシュ・プログラムに期待。

文:小田島久恵(音楽ライター)