『パッドマン 5億人の女性を救った男』

 今回は相次いで公開された、実話を基にしたアジア映画を2本紹介する。

 まずは、インド映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』から。こちらは、愛妻を楽にしたい一心で始めた工夫が、安全で安価な生理用品の普及につながったというひょうたんから駒のような話。

 主人公ラクシュミ(アクシャイ・クマール)の孤軍奮闘ぶりを、ユーモアを交えながら描く。知られざるインドの風習や風俗の描写も興味深く映るが、そもそもこの話がわずか10数年前のことだと知って驚いた。

 映画を見ながら、ラクシュミのけなげさや純粋さに胸打たれ、彼を応援したい気分になるが、これは脚本のうまさと、本国では“インドのジョージ・クルーニー”と呼ばれているという、クマールの好演に寄るところが大きい。ラスト近くの国連での演説が嫌味にならず、むしろほのぼとさせられるのも、彼の演技力の賜物だ。

 もちろん、インド映画お得意の歌と踊りの挿入もあるが、今回はドラマの内容に沿った歌詞が効果的で面白かった。

 一方、タイを舞台にした『暁に祈れ』は、麻薬所持によって“生き地獄”と呼ばれるタイの刑務所に服役するが、ムエタイで再生し、生き残ったイギリス人ボクサー、ビリー・ムーアの実体験を描く。

 実際の刑務所で撮影され、そのほとんどが本物だという全身入れ墨の囚人たち(誰が誰だかほとんど区別がつかない)が異様な雰囲気を醸し出す。加えて、最低限の字幕しか出さず、見る者にも、ビリーが感じたであろう、人も言葉も分からぬ恐怖と孤独を味あわせる。

 『ミッドナイト・エクスプレス』(78)のトルコよりも、さらにひどい刑務所がタイに合ったという感じがしたが、これもそれほど昔の話ではないのだから驚く。

 ビリー役のジョー・コールは熱演し、全編に異様な負のパワーが満ちあふれてはいるが、正直なところ、登場人物の誰にも共感、感情移入することができない。ストレートなバイオレンス描写なども含めて、生理的に駄目だという者も少なくないのではないかと思う。

 このように、対照的な2本だが、どちらもアジアの現実の一端を描いていることだけは確かだ。(田中雄二)

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