格安SIMカードは最初、このような状態で販売されている。SIMカードの取り外し、取り付けの際には、端子部分を直接触れないように手袋装着がオススメ

格安スマホを実現するためには、「格安」のSIMカードと、「格安」のスマートフォンが必要だ。しかし、ここで頭を悩まされるのは、様々なサービスメニューや料金体系がある「格安SIMカード」の選び方ではないだろうか? そこで今回は、主要な格安SIMカードのスペック・料金、実際の通信速度などを比較しつつ、どのようなポイントに注目して選べばよいか解説していこう。

●まずはSIMカードについてのおさらいから

SIMカードとは、スマートフォンや携帯電話が通信や通話を行うために、電話番号を特定するID番号が記録されたICカードのこと。なかでも格安SIMカードは、ドコモやauなどの通信事業者から通信網を借りてサービスを提供している事業者のSIMカードのことを指しており、それら事業者はMVNO(Mobile Virtual Network Operator)と呼ばれている。つまり厳密には、格安SIMカードではなく、MVNO SIMカードと呼ぶほうが正しい。

それでは、なぜMVNO SIMカードは格安SIMカードと呼ばれるほど利用料金が安いのだろうか? たとえばドコモと、ドコモの回線を利用しているIIJmioの月額料金を比較してみよう。

音声通話ができて、パケット通信量3GBという条件で揃えると、ドコモが税込8100円、IIJmioが税込1728円と、6372円もの差がつく。その差の理由は、まずドコモが音声通話無制限の「カケホーダイ」を必須プランとしていること。

音声通話を20円/30秒で計算すると、ドコモの基本使用料に相当する2700円で67.5分ぶん通話できる。それ以上通話する人ならカケホーダイはお得なプランだが、それ以下に収まる人にとっては通話する都度料金が加算される従量制のほうが安い。

そのほか安い理由として、設備投資の費用を節約する、ショップを持たない、端末を開発しない、独自サービスを用意しない、サポートを最小限に抑える……など、コストを抑えているから。こうした施策でキャリアの半額以下の月額料金を実現しているのだ。逆に言えば、格安SIMカードには、ドコモ、au、ソフトバンクなどの大手キャリアで受けられるような手厚いサポートは存在しないということを、しっかりと理解したうえで導入するようにしてほしい。

●格安SIMカードはココに注目!

下の表に代表的な格安SIMカードを掲載した。なお今回はデータ通信専用SIMカードに絞って紹介しているが、ほかに音声通話機能付きSIMカード、SMS機能付きSIMカードがある。IIJmioの場合、音声通話機能付きSIMカードはプラス700円、SMS機能付きSIMカードはプラス140円となる。ほかの事業者もほぼ同じ水準の価格だ。

この表では、ドコモ系、au系格安SIMカード、そしてプリペイドSIMカードの3種類に分類している。ドコモ系とau系の格安SIMカードの違いは、サービス事業者がどちらの通信網を利用しているのかという点。下記の記事でも解説したが、それぞれ対応しているSIMフリースマートフォンが異なるので注意してほしい。

参考:ぶっちゃけ、何がいいの? 後悔しないSIMフリースマホ~2015年春版~

プリペイドSIMカードとしては、日本通信の『b-mobile 4G 1GB定額』を選んだ。これは、開通してから30日間または1GBに達するまで利用可能なプリペイドSIMカードで、ドコモ系MVNO SIMカードでもある。継続して利用するにはほかの格安SIMカードよりも割高なチャージ(追加)料金が必要になるが、スマホやタブレットを短期間試したいならトータル税込3580円というわかりやすい料金体系が魅力だ。

さて比較表に話を戻そう。プリペイドSIMカードを除くと、初期費用は税込3240円と横並び。つまり注目すべきなのは、月額料金と、1か月で使用可能な「通信量」ということになる。ドコモ系で安いのはDMMの「DMM mobile データSIMプラン 1GB」。月額料金712円を実現している。

意外と使い勝手がよさそうなのがU-NEXTの「U-mobile データ専用 ダブルフィックス」。1GBまではDMM mobileに迫る734円、1GBを超えると972円となる2段階制の料金プランを採用している。1GBを超えても「IIJmio ミニマムスタートプラン」と横並びの月額料金になるのが絶妙な設定だ。

一方、au系格安SIMカードは、au(KDDI)の子会社となるKDDIバリューイネーブラーと、ケイ・オプティコムのふたつの事業者のみがサービスを提供している。au系格安SIMカードでできるだけ月額料金を抑えたいなら「mineo シングルタイプ 1GB」を選ぶことになるが、利用開始の翌月から12か月間以前に解約する際には解約事務手数料1万260円が必要となるので注意が必要だ。

●格安SIMカードの実効通信速度はいかに?

「下り最大通信速度150Mbps」と謳っていても、実際の通信速度は電波の強さや、周囲に同じ通信網を利用している人がどのくらいいるかによって大きく左右される。というわけで今回、格安SIMカードでどのくらいの通信速度が出るのか実際に検証してみた。計測に使用したのはインターネットイニシアティブ(IIJmio)、日本通信(b-mobile 4G)、ケイ・オプティコム(mineo)の3種類のMVNO SIMカードだ。

今回最も好成績を収めたのはau系格安SIMカードのmineo。平均値で下り22Mbpsを超える通信速度を、上野、赤羽、大宮駅の3ヵ所で記録した。平均で20Mbpsを超えたのはかなり優秀な下り通信速度と言える。スマートフォンのほとんどのアプリケーションを快適に利用できるだろう。

IIJmio、b-mobile 4Gはmineoに一歩及ばない結果となったが、IIJmioは4ヵ所すべてで14Mbpsを超えており、b-mobile 4Gも品川駅を除いて18Mbpsを超えている。YouTubeでフルHD動画(1920×1080ピクセル)を再生する場合でも8Mbpsあれば事足りるとされているので、実用上困ることはないはずだ。

●事業者選びよりプラン選びに時間を割くべき?

最近利用者が増えている「通信量無制限プラン」は、各MVNOが通信速度に独自の制限をかけているため使い勝手に大きな差があるが、少なくとも今回計測を実施した3事業者の定額プランについては、実用上の違いが出るほどの差とはならなかった。

しかし実は同じキャリア系であっても、MVNOごとに確保しているネットワーク回線帯域とネットワーク設備は異なっており、加入者数とのバランスによって実効通信速度は日々変化している。つまり今回の結果も、計測を実施した4月中旬時点のもので、実効通信速度は常に変化していることをご了承いただきたい。

最後に、格安SIMカードで少しでも月額料金を抑えるためには、自分に必要な通信量を見極めることも重要だ。初めてスマートフォンを格安SIMカードで運用するなら、3GBぐらいのプランから始めてはいかがだろうか? スマートフォンを導入した月はついつい使いすぎて通信量が増えがちだが、毎日の通勤・通学時などに動画を見続けるような利用方法をしないかぎりは、3GBを超えることはまずない。もし通信量が大幅に3GBを下回るのであれば、段階的に通信量が少ないプランに調整するといいだろう。(ジャイアン鈴木)