最近、発売になったスマートフォンで最も気になるのが、高価格帯にシフトしていることだ。パソコンよりも高額な製品が存在するほか、大画面化や重量化が進んでいる。こうした変化を、家電量販店・ネットショップの実売データを集計するBCNランキングをみていくことにする。

まず、大画面化の変遷について。画面サイズ帯別に算出した販売台数比率の推移をみると、2年前の2016年11月にはiPhone 7を含む「4.5-5.0"未満」が40.9%を占めて最大のボリュームゾーンだった(図1)。その後、17年6月にはHuawei Technologies(以下、Huaweiと表記)のP10 liteの発売で、「5.0-5.5"未満」のゾーンが増加する。しかし同年9月のiPhone 8の発売で、再び「4.5-5.0"未満」が盛り返したものの、17年10月までは大画面化の動きは比較的緩やかなものだった。その後iPhone Xの発売(17年11月)をきっかけに、「5.5-6.0"未満」が34.3%に達したが、瞬間的な動きにとどまった。「5.5-6.0"未満」の比率が月を追うごとに増加したのは、18年6月に発売となったHuawei P20 liteがきっかけで、ここから本格的な大画面化が始まったと言ってよさそうだ。同年9月にiPhone XSによって「5.5-6.0"未満」は34.5%と、ここ数年では最大となった。11月にはiPhone XRを筆頭にXperia XZ3などが「6.0"-」の構成比をけん引、さらなる大画面化が進んでいる。

次いで重量化について。大画面化に伴い消費電力は増え、それによりバッテリーを大きくせざるを得ないことが、本体重量の増大化に直結しつつある。そこで、重量帯別販売台数比率をみていこう(図2)。2年前の16年11月から17年5月までは「130-140g未満」のゾーンが4-5割強を占めていたが、17年6月から「140-150g未満」が増加した。この要因はHuawei P10 liteと富士通 arrows Be F-05Jの発売だった。その5カ月後にはiPhone 8の発売により4割目前まで迫るものの、翌11月のiPhone X発売でさらに重い「170g-」の比率が急増した。その後は、iPhone 8の復調で歯止めがかかったが、18年6月以降はAQUOS R2とXperia XZ2、10月のiPhone XS、XRの発売で「170g-」の比率増が加速しており、今後も重量化の傾向は止まりそうにない。

docomoは18年冬春モデルで、大画面・重量化するスマートフォンを補完するため、カードケータイやワンナンバーサービス対応の端末を投入した。本来、手のひらに収まるサイズでパソコンのような多機能であることが売りであったスマートフォンは、大きすぎて携帯しにくくなるスマートではない端末へと『進化』している、とみることもできる。カメラやゲーム、大画面に特化した端末は特定の消費者が望んでいることであり、今までのような4.5"程度の端末など、幅広いラインアップを取り揃えることも必要だと感じる。使わない機能が多い上、オーバースペックであること、さらには高価格帯製品の増加を消費者は望んでいるのだろうか。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。