最新シングルに見る「フック」と「両面性」

この「フック」と「両面性」という要素は、最新シングル「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』 」にも見ることが出来る。そもそも、タイトルが異様に長い(笑)。この時点で興味を惹かれたり、逆に敬遠したり、なにはともあれ受け取り手の心は揺れる。楽曲はやけに壮大で複雑、ハードなギターサウンドは『労働讃歌』の作詞を担当した大槻ケンヂのグループ「筋肉少女帯」を髣髴とさせる。手がけるのは現在メディアへの露出が増えている新進の作曲家、『行くぜっ!怪盗少女』や『ココ☆ナツ』『ワニとシャンプー』で知られるヒャダインこと前山田健一。過剰なほどにフックをつけた、非常に現在のももクロらしい曲ではないだろうか。

ギミック重視のフック曲が『猛烈宇宙交響曲~』だとしたら、同時に収録されているB面曲『LOST CHILD』は、現在流れが来ているブレイクビーツを取り入れたシリアスな楽曲。4曲目に収録されているカラオケならぬ“off vocal ver.”で聴いてみると、間奏では大胆にアシッドなシンセと90年代後半に旋風を巻き起こしたSquarepusherらを思わせる複雑系ビートを取り入れていることがわかる。90年代クラブサウンドの要素を非常に聴きやすい形で取り入れているのだ。この『LOST CHILD』を手がけたのは、大槻ケンヂと共にバンド「特撮」を組むNARASAKI。名曲『ピンキージョーンズ 』や、同じくブレイクビーツを取り入れた『天手力男』など、複雑さと同時に爽快感に溢れた楽曲を作り出す彼を、製作陣に迎えているのはさすがである。

ひとつの魅力で突き進むアイドルももちろんいいが、ももクロのように、両面性を武器に戦うのも素晴らしい。今後のももクロがどのようなフックでファンを引っ掻き回すのか、そしてどんな魅力でファンを惹きつけるのか、ももクロは、まさしくアイドル界の「LOST CHILD」(迷子)である。思うがままにさ迷い、アイドルの新たな地平を発見してほしいゼーット!!!!! 

 

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1番手レビュア 鈴木 妄想

すずき・もうそう 1977年横須賀市生まれ。
ブロガー、イベントオーガナイザー。2004年からはてなダイアリーにて、ブログ「
鈴木妄想なんじゃもん」を開始。アイドル、プロレス、クラブミュージックなど、日本・韓国を始めとしたアジアのポップカルチャー/サブカルチャーについて独自の視点で語り続ける。著作に「新大久保とK-POP」(マイコミ新書)。Twitter

ニューシングル 猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』

【収録内容】
M1.『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』
M2.『LOST CHILD』
他 各off vocal ver. 全4曲収録
特典DVD『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』ミュージックビデオ収録

 

 

【収録内容】
M1.『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』
M2.『LOST CHILD』
M3.『DNA狂詩曲』
他 各off vocal ver. 全6曲収録