そもそも「ユーフォニアム」って、どんな楽器?

タイトルにもなっている、ユーフォニアム。「ユーフォニウムじゃないのかよ」と思った人は、『深層の祭』以上の世代ではないだろうか。

『深層の祭』は1989年度のコンクール課題曲であり、年度ごとに制作される吹奏楽コンクールの課題曲を以ておよその年齢が解る。むやみに歳を聞けない女性に対しては、自分との年齢差を確認できる元吹奏楽部員ならではの常套手段だったりもする。話はそれたが、この当時はまだ〈ユーフォニウム〉だった。今の30代後半から上の世代は〈ユーフォニウム〉のほうがしっくりくるのである。

その後、発音表記に近い〈ユーフォニアム〉呼称が普及しはじめ、ヤマハのカタログでは2000年版から正式に表記変更されている。外国語のカナ表記は時代と共に変わっていくもの。似たような事例として『サバの女王ベルキス』から『シバの女王ベルキス』、『ダフニスとクローエ』から『ダフニスとクロエ』など、タイトル表記が変わった楽曲も多く存在している。

女子に人気の高いフルートやクラリネットではなく、そんなユーフォニアムをメインに据えてるところが、これまた経験者の心をくすぐるところ。部外者に「何の楽器をやっているの?」と尋ねられたとき、かなしきかな、なんとも説明しづらい一般的な知名度の低い楽器の代表格である。

管楽器の中では歴史が浅く、オーケストラには登場しない、ジャズやポップスにも向かない…。たが、吹奏楽においては中低音でバンドサウンドに厚みを与え、そのふくよかで美しい音は、主旋律から裏旋律、伴奏まで大活躍する。それゆえに最も“吹奏楽らしい楽器”でもある。

ユーフォニアムの美しい音を最大限に引き出すスイスの奏者、トーマス・リューディ(Thomas Rüedi)。スイスといえば、泣く子も黙る銘器メーカー〈ウィルソン〉が有名だが、トーマス氏はヤマハを愛用。

黄前久美子の手にする金色のユーフォ

アニメとはいえ、使用楽器が気になってしまうのも楽器マニアの定め。「銀色(銀めっき仕上げ)」が一般的なユーフォニアム。黄前久美子の手にする「金色(正しくは、“イエローブラス”のラッカー仕上げ)」は入門者向けの比較的安価なモデルに多い。有名校ではない学校の備品という設定を考えれば、安価なほうがリアルなわけだ。サイドアクションの第4ピストン、管の形状とケースから察するに、ヤマハのYEP-621だが、ラッカー仕上げはラインナップには存在していない。

思えば、『けいおん!』でもオリジナルモデルが登場していた。中野梓の愛用するムスタング(愛称:あずにゃんぐ)はエルボーカット入り、キャンディー・アップル・レッドのボディカラーにマッチングヘッド。この仕様は現在〜過去含め、フェンダーの歴史上にも存在ないモデルであり、のちにアニメに合わせて限定販売された。

久美子のユーフォも、あずにゃんぐのようにオリジナルモデルとして市販されたりも…?!いや、でもギターのように、おいそれと買える値段でもないし…、と思っていたのだが、アニメ化決定以降、問い合わせが多いらしく、先月より特注モデルとして販売されている。アニメの影響、 おそるべし…。

 

楽器描写や演奏作画も高いクオリティとこだわりで制作されているが、それはもちろん“音”にも及んでいる。劇中演奏はすべて、洗足学園音楽大学によるもの。コンクール課題曲のクリニックなど、吹奏楽が盛んな音楽大学として知られており、学園内には4つの吹奏楽団がある。作中は全員1年生で構成される〈フレッシュマン・ウィンド・アンサンブル〉が担当。2〜4年生の選抜メンバーによる〈ホワイト・タイ ウィンド・アンサンブル〉が本来の同学園を代表するバンドであるが、より高校生に近いバンドが担当するというリアリティを求めたこだわりである。

フレッシュマン・ウィンド・アンサンブルによる吹奏楽人気曲、A.リード『春の猟犬』