相葉のコメディ・センスも絶賛!

そんな相葉の何気ない言動が最も活きているのが、空港での榮倉とのクライマックスのシーンだ。

「榮倉さんも『のぼうの城』(12)のときより格段に上手くなっていたし、ふたりともちゃんと感情が伴った演技をしてくれる。あの空港の彼女の手に文字を書いて、キスして…というくだりもふたりが魅力的だったし、彼らの2ショットだけで説得力があったから、切り返しの画を撮らなくてもいいなって素直に思えたんです。僕がいちばん好きなシーンですね」

さらに犬童監督は、相葉のコメディ・センスも絶賛する。

「ヒョジュさんとの居酒屋のシーンが象徴的ですよね。あそこは最初はもっと普通のシーンだったんだけど、ヒョジュさんが『韓国語のピゥルギ(鳩)の意味を鳩の動きで説明すると面白いし、短い時間でふたりの距離が近づくのが表現できるんじゃないですか?』って言い出して、ああいうシチュエーション・コメディの形になった。光が韓国語の辞書を持っているという設定は最初からあったけど、あの辞書を見ながらのコミカルなやりとりは、相葉くんが始めたふたりのアドリブ。ヒョジュさんも上手かったけど、相葉くんがすごく自然にコメディ・センスを発揮していたなと思います」

すごく高度なことを、ごくごく自然に、当たり前のことのようにやってしまうから、多くの人はそれに気づかない。その、これ見よがしじゃない、いかにも芝居をしていますよ! といったものとは真逆の表現ができ、存在自体に説得力があるところが相葉雅紀のスゴさなのだ。

「だから、僕は相葉くんで『エリン・ブロコビッチ』(00)みたいな映画を作りたいんですよ。あの映画は、シングルマザーの主人公がちょっと変わった弁護士と一緒に大企業が引き起こした水質汚染問題を闘い、勝訴する姿をコメディタッチで描いていて、ヒロインの思い込みと正直さが一点を突破してしまうところがありますよね。ああいった主人公の思い込みや正直さに周りの人たちがついてきて、一点突破してしまうような話を相葉くんでやりたいんです。相葉くんなら、みんながついていこうかな?って思えるキャラクターができそうな気がするんですよ」

相葉雅紀に関する克明な分析を聞いた後だけに、犬童監督が最後に語った“未来の映画”に主演している彼の姿もはっきり目に浮かぶ。『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』を劇場公開時に観ている人も観ていない人も、ブルーレイやDVDで観て、それを可能にできる相葉雅紀の底力を再認識して欲しい。

  

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©2014『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』製作委員会 ©2013中村航/小学館   
発売元:アスミック・エース/ジェイ・ストーム 販売元:東宝

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。