ロールケーキの生地の材料は、米粉の他、卵、砂糖大根で作った北海道産のてん菜のみ。
ショコラの生地には、玄米粉とココアパウダーも配合するが、それ以外はすべて同じ材料。
ケーキには不可欠と思われているベーキングパウダーも不使用。
材料を混ぜる際、しっかりと空気を含ませる。
それによりベーキングパウダーを使わなくても膨らむのだそうだ。

フワフワに焼きあがった生地からは、鼻孔をくすぐる芳醇な香りを放っていた。
冷ました生地にホイップクリームをたっぷりと塗る。

生クリームは、乳化剤などの添加物を用いていない北海道産を厳選。
生地同様、白砂糖を使わず、甘酒とてん菜で甘みを醸し出している。
甘酒の中には、酒粕に砂糖を加えて作るものもある。
柘植さんが選んだのは、米麹、米、海水塩を材料とする、発酵食品の糀甘酒だ。

「糀甘酒は甘いだけでなく、ビタミン類や酵素、天然アミノ酸、植物繊維など、約400種類の栄養素が含まれていることから、飲む点滴といわれています。近年甘酒には、アンチエイジング効果や美肌効果、ダイエット効果などがあることがわかってきました。パティシエだからこそ、甘さにこだわりつつ、健康にも配慮し、身体に負担が少なくて、身体が錆びにくいスイーツを目指しています」

「おいしくなければ、お菓子ではない」

これが、柘植さんのパティシエとしてのポリシー。
良薬は口に苦しというけれど、いくら健康によくても、まずいスイーツは食べたくない。
食は楽しみ。
だから、安心でおいしいスイーツを食べたい。
でなければ、スイーツを食べる理由がない。
添加物を使っていないので日持ちしないが、甘さがぜんぜん違うのだそうだ。

「80cmのロールケーキを食べきれなければ、切り分けて冷凍してください。
自然解凍すればおいしく食べられます」