『アニマル・キングダム』のジャッキー・ウィーバー

今年2月に授賞式が行われた2010年度のアカデミー賞のうち、助演女優賞にノミネートされた女優の中に、日本では誰も知らないような名前があった。それが、オーストラリアのベテラン女優、ジャッキー・ウィーバー。彼女が絶賛を集めた映画『アニマル・キングダム』の日本公開が2012年1月21日に決定した。

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毎年、アカデミー賞にノミネートされるほどの良作でも、日本での公開がなかなか決まらない作品があるものだが、本作『アニマル・キングダム』がまさにそれ。2010年度の主要部門ノミネート作の中で、唯一日本公開が決まっていなかった作品だ。

本作の舞台は1980年代のメルボルン。母親が薬物の過剰摂取で突然死してしまった17歳の少年が疎遠だった親族の家に引き取られるが、そこに住む男たちは強盗や麻薬売買を生業にする犯罪者ばかり。真面目だった主人公の少年もずるずると悪の道に引き込まれ、さらには一家と警察との熾烈な抗争に巻き込まれていく。タイトルを訳すと“野生の王国”だが、その名のとおり弱肉強食の世界に放りこまれた少年の葛藤と成長が描かれる。

この映画でジャッキー・ウィーバーが演じたのは、犯罪一家を束ねる祖母役。一見、家族に惜しみない愛情を注ぐ優しいおばあちゃんのようだが、ウラでは犯罪稼業を取り仕切っているという、劇中最も印象的なキャラクターだ。特に物語が進むにつれて露わになっていくボスとしての凄みは強烈で、オーストラリア映画から堂々オスカーノミネートを達成するという快挙も納得させられる。

本作は、アカデミー賞以外にもゴールデン・グローブ賞や全米各地の映画賞で受賞・ノミネートされているのだが、他にも、あのクエンティン・タランティーノに“2010年の映画ベスト20”のトップ3として『トイ・ストーリー3』『ソーシャル・ネットワーク』に続いて挙げられるという栄誉も獲得。タランティーノほどの映画通をも唸らせた存在として、まさに満を持してやってくるジャッキー・ウィーバーと本作、日本の映画ファンも必見だ。

『アニマル・キングダム』

(c)2009 Screen Australia, Screen NSW, Film Victoria, The Premium Movie Partnership, Animal Kingdom Holdings Pty Limited and Porchlight Films Pty Limited.