好きな相手の前では素直になれない片思い/『にゃんこい!』の住吉加奈子

相手のことを愛しているのに、その気持ちが伝わらない、伝えられない……片思いをしている女の娘は、非常にセンチメンタルな存在であり、胸に迫るようなエモーションに満ちています。

そんなエモーショナルな"片思いヒロイン"として、私が一番大好きな女の娘が『にゃんこい!』の住吉加奈子さんです。

ある日、フトしたはずみで猫地蔵と呼ばれるお地蔵様を壊してしまった主人公、高坂潤平。その呪いから、彼は猫の声が聞こえるように……。

猫アレルギーにも関わらず、呪いを解く為に困っている猫の手助けをする潤平。そんな日々の中で、図らずしもクラスメイトで意中のヒロインである水野楓さんとお近付きになることに成功します。

ストーリーのメインは、潤平と水野さんの甘酸っぱくてもどかしい青春ラブストーリーですが、そこに可愛い猫や女の娘たちが織りなす恋愛模様を織りませながら『にゃんこい!』のストーリーは紡がれていきます。

テンションの高いコメディアニメならお手の物な川口敬一郎監督による演出と、出演声優の皆さんによるアドリブを多用した台詞回しによって、アニメ版では原作漫画に比べて更に笑いの要素がパワーアップしており、非常にラブコメらしいラブコメ作品となっています。

一方で、登場人物の心理描写や恋愛描写は繊細で丁寧です。そして、本作においてそのセンチメンタルな恋心が大爆発するのが、潤平の幼馴染である住吉加奈子さん。

子どもの頃は仲良しだったにも関わらず、ある事件をきっかけに潤平と疎遠になっていた加奈子さん。高校で同じクラスになるものの、素直になれない性格もあいまって、実は潤平のことがずっと大好きだったにも関わらず、その思いを相手に伝えることができず、顔を合わせる度に憎まれ口を叩いてしまいます。

しかも、彼女は、潤平が水野さんを好きなことに気付いているのです。実は、水野さんと加奈子は親友同士。恋と友情の狭間で、加奈子さんは、時に水野さんの恋を後押しながらも、自身の思いは打ち明けられない切ない恋をすることに……。

もう、この娘には、"いじらしい"という言葉が本当にシックリきます。

スタイル抜群で、美人で顔も可愛い素敵な女の娘。だけれど、長年に渡って恋い焦がれてきた相手の前では素直になれず、親友への気遣いも相まって、その思いを口にできない女の娘。恋心を、その大きな胸の内にしまい続けている女の娘。

住吉加奈子さんは、そんないじらしくて切ないヒロインなんです。

特に胸に迫ってくるエピソードが、第9話の<ガールズ・イン・ザ・ウォーター>。前半は、所謂"水着回"で、登場人物たちによるかしましい恋愛模様がポップかつチアフルに描かれているのですが、後半ではグッと空気が感傷的になり、加奈子さんの胸の内にフォーカスが当てられます。そして、最後に彼女が心の内で呟くひと言の切なさときたら……。

相手に思いが伝わらないもどかしさとセンチメンタルと、だけれども、恋をしているからこそ感じられる多幸感に溢れた歌詞が素晴らしい本作のエンディング曲『Strawberry ~甘く切ない涙~』も彼女の心情に見事にシンクロしていて、これまた胸に迫ります。

明るくて、楽しくて、だけれども、ちょっぴり感傷的で……という相反する魅力に満ちたラブコメ作品『にゃんこい!』。もどかしさといじらしさに身悶えしたい方は必見のアニメ作品です!