BCNの道越一郎チーフエグゼクティブアナリスト

液晶テレビは台数、金額ベースともに回復基調にある――。全国の主要家電量販店などの実売データを日次で集計するBCNは6月17日、主要メディア向け記者会見を開催した。道越一郎チーフエグゼクティブアナリストは「5月の数字をみると、台数は13年、14年の規模を超え、金額は12年を超えた。縮小傾向だったフェーズから抜け出して、中期的にも回復局面に入ったといえる」と分析する。

●液晶テレビの台数が7か月連続で前年上回る

液晶テレビは回復基調にあり、販売台数は昨年11月から7か月連続で前年同月を上回っている。3月はケーブルテレビのデジアナ変換が終了したことに伴って、小型テレビを中心に販売が拡大。昨年生じた消費税増税前の駆け込み購入特需の台数をわずかながら上回り、前年同月比101.4%を記録した。一方、昨年4月は増税前の駆け込み購入の翌月。大きな反動減に見回れたが、翌年にあたるこの4月は同153.1%と大幅に伸張。5月も117.9%と引き続き2ケタ成長を記録した。

金額ベースでも4月は152.2%、5月は122.2%と2か月連続で前年を上回り回復基調に乗り始めている。とりわけ、12年5月を基点とした場合の今年5月の販売金額指数と平均単価は、12年、13年、14年をいずれも上回っている。

道越アナリストは「4Kテレビの拡大が、テレビ全体の市場の戻りに貢献している。4Kテレビは、全体の台数構成比で1割を超えるまでになった。50型以上に絞ってみると、4Kテレビの販売構成比は台数ベースで47.2%、金額ベースで64.3%と、大型は4Kの流れができつつある」と語る。

メーカー別の分析で、伸びているのはソニー。14年5月以降13か月連続で前年比を上回り、5月も販売台数は194.8%とほぼ倍増の勢いである。台数規模では3年前の12年の水準を上回った。平均単価も9万5700円と主要4社では最高をマークしている。

●ソニーの4Kテレビの販売金額構成比が51.4%に、パナソニックも急速に追い上げ

液晶テレビに占める解像度別構成比をみても、ソニーの販売台数比率は2割を上回っている。販売金額でも51.4%と過半に達しているなど、4Kをはじめとするプレミアム路線の戦略が、数字にも反映されている。「ソニーのテレビ事業は、半分以上が4Kテレビの販売金額で占められている」(道越アナリスト)。

一方、液晶テレビでトップシェアのシャープは、伸び率でソニーほどの力強さはないが、5月の販売台数は108.1%とプラスに、販売金額も118.3%と2ケタ増を達成した。ただ、平均単価は6万1100円と主要4社の中で最安。4Kモデル比率が7.6%(台数)と他社より低いことから、収益力を上げるには台数構成比の構造そのものを変える必要があるといえそうだ。

パナソニックは、販売台数は101.2%とほぼ前年並みだったが、販売金額は113.3%と2ケタ増を達成。4Kモデルの販売台数構成比も14.4%と急激に上げてきており、徐々に高収益モデルの構成比が高まっている。特に4Kモデルのうち、手頃な価格の40型台の4Kテレビが構成比で5割を超えており、こうした小型の4Kを足がかりにしたシェアの拡大も期待できる。

東芝は、販売台数こそ前年同月比109.1%と市場拡大に寄与したものの、販売金額は主要4社の中で唯一前年割れの93.6%だった。HD以下モデルの販売台数構成比が59.0%と突出して高いことも要因といえそうだ。

いずれにしても4Kテレビの販売の伸びは、液晶テレビ全体における平均画面サイズのアップにも如実に表れている。5月の平均画面サイズは34.2型と、最高水準まで急激に伸びている。BCNでは、液晶テレビの大型化の流れは今後も継続されるだろうと分析する。

ただし「今後は4Kの訴求だけでは当たり前になりつつあり、消費者の背中を後押しするプラスアルファの機能やサービスが必要になってくるだろう」(道越アナリスト)と読む。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。