「BCN+R」編集部では年末企画として、編集長・編集キャップ・編集部員3名の計5名が今年のトレンドを振り返る座談会を企画。テーマごとに、5回に分けて公開します。【本記事は4本目です。次回更新は「総括」となります】

スマホ決済サービスの競争が激化

現金を持たなくても支払いが可能なキャッシュレス。クレジットカードに加えて、デビットカード、プリベイトカード、電子マネー、QRコードやバーコードかを使って支払うスマートフォン(スマホ)決済など、複数のサービスがあって何を使えばいいか迷うところではあるが、「おろし忘れて、お金がない!」ということがなく、使ってみると非常に便利だ。

そのため、ここにきてキャッシュレス化が普及しそうな機運が高まっている、ということで編集部の意見は一致した。特に、ボーナス商戦やクリスマス商戦などを見据えたスマホ決済サービスの“キャンペーン合戦”によって、一気に波が押し寄せたといえよう。

まず、口火を切ったのが「PayPay」だ。決済利用金額の20%相当の「PayPayボーナス」を翌月10日に付与する「100億円あげちゃうキャンペーン」を12月4日に開始した。キャンペーン期間は、19年3月31日までに設定。ただ、利用者が想定を上回る勢いで増えたことによって、断続的に利用しにくい状況になったほか、12月13日で100億円に達したということで、わずか10日間でキャンペーンが終了した。

次に、PayPayのキャンペーンが終了した翌日の12月14日、「LINE Pay」が20%還元の「Payトク」キャンペーンを開始。期間は12月31日まで。5000円分の還元が上限だが、キャンペーン参加に事前の申し込みなどが不要という点で、利用者が増えている。

さらに、「Origami Pay」で加盟店と共同で「オリガミで、半額。」キャンペーンを順次展開。第一弾は、吉野家での「牛丼並盛一杯半額」で12月17日に開始となった。12月31日23時59分まで、Origami Payで300円(税込)以上を吉野家で決済すれば190円オフの割引となる。牛丼並盛一杯が定価380円(同)であるため、半額の190円(同)ということだ。第二弾以降は、DEAN & DELUCAで1月下旬、ケンタッキーフライドチキンで2月を予定している。

混乱だけは避けたい

主要スマホ決済サービスによる会員獲得に向けた熾烈な争いによって、キャシュレス化は確実に進んだといえるだろう。また、例えばビックカメラが複数のスマホ決済サービスに対応するなど、加盟店も増えている状況で、さまざまな場面で利用できる環境が整ってきた。実際、編集部の記者もPayPayやLINE Pay、Origami Payを利用し、メリットを享受しているようだ。

2025年までに決済比率40%を目標に据えて、政府はキャッシュレスの推進に本腰を入れている。日本は現金払いが主流で、海外と比べるとキャッシュレス化が遅れているといわれている一方で、20年に東京五輪の開催、25年に大阪万博の開催などと、今後はインバウンドがますます増加するとの見方があり、キャッシュレス化が一段と重要視されるだろう。

しかも、19年10月予定の消費税率10%への引き上げに伴って、政府はキャッシュレス決済であれば購入額の5%もしくは2%をポイントで還元するなどといった施策も検討している。

今後、ますますキャッシュレス関連サービスの利用が増えることが予想されるが、「この店舗は『〇%』」「あの店舗は『〇%』」ということになれば、サービス利用者から店舗の見分けがつかないという問題が起きかねない。店舗にとっても、負担が大きくなる可能性が高い。キャッシュレスの利便性を最大限に生かして、混乱を避けることに期待がかかる。(BCN・佐相彰彦)