ゴツプロ!第四回公演「阿波の音」 稽古場より 撮影:MASA HAMANOI ゴツプロ!第四回公演「阿波の音」 稽古場より 撮影:MASA HAMANOI

小劇場界で活躍する40代男性俳優たちが2015年に旗揚げした劇団「ゴツプロ!」の第四回公演『阿波の音』が、1月9日(水)より東京・本多劇場で開幕。その後、大阪、台湾で上演される。その通し稽古に潜入した。

【チケット情報はこちら】

劇団「ふくふくや」の山野海が演出、竹田新(山野海の別名義)が脚本を手掛ける本作は、終戦後の東京の材木問屋が舞台。徳島で育ち「阿波踊りの名手」と呼ばれ村の人気者であったが自分を育てるために売春婦となった亡き母を持つ武一(泉知束)は、飲み友達だった材木問屋の親方・伝五郎(浜谷康幸)に拾われて木場(材木問屋が集まった町)で働き始める。しかしそこで偶然再会したのは、同じ村で育った幼馴染の慎之介(塚原大助)だった――。折しも日本の建築の主流が鉄筋に移り始めた時代、不安な空気を打破するために同じく阿波出身の番頭・吾助(渡邊聡)の提案で「心をひとつにしよう!」と阿波踊りを踊ることになるが……。

気性は荒いが情が厚い男たちの物語。武一と慎之介の過去を軸にしながら、「過去」「いじめ」「差別」「裏切り」「因縁」「諦め」「妬み」「暴力」「つぐない」「背負わせること」「託すこと」そして「生きること」……きれいごとで済まないさまざまなものを、ひとつではなくさまざまな角度から描く。勧善懲悪とはまた違う“あるもの”は“あるもの”として包み込む視点が印象的で、そこにグイッと引き込む力強さと空気の揺れまで伝える繊細さを持った芝居は熱く、ひたひたと空間を浸していくようにクライマックスの阿波踊りに向かって進んでいく。劇中に何度も出てくる「♪何もかんも忘れて踊ろじゃないか  えらいこっちゃ、えらいこっちゃ ヨイヨイヨイヨイ  踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃソンソン」という節はどんどん意味を持っていき、観ているとさまざまな感情を引き出された。

大きな見どころとなる阿波踊りのシーンでは、東京公演では吹鼓連(すいこれん)、大阪公演では大阪天水連(てんすいれん)が参加。稽古場で見たキャスト陣だけの踊りも迫力があり胸を打たれたが、さらに踊り手が加わった光景は壮観なはず!開幕を楽しみに待ちたい。

台湾の烏梅劇院(ウーメイシアター)と本多劇場グループが姉妹劇場の関係を結び、その活動の一環として台湾の技術スタッフも参加している本作。公演は1月9日(水)から14日(月・祝)まで東京・本多劇場、1月18日(金)から21日(月)まで大阪・近鉄アート館、2月15日(金)から24日(日)まで台湾・華山1914文創園區烏梅劇院にて。

取材・文:中川實穂

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます